春のサクラダイを使ってマダイのさばき方と、お刺身の切り方について部位別にご紹介しています。
タイの見分け方
タイは天然と養殖、オスとメスを見分けるのが非常に簡単な魚です。
天然のタイは尻尾がきれいに直線に伸びています。養殖のタイは尻尾が擦れて丸まっていたり、浅瀬で育てられるので身が日焼けして、きれいな赤色をしていません。
オスとメスの見分け方は、顔を見た時に目の上に青いアイシャドウみたいな色が入っているタイはメスである場合がほとんどです。
メスのタイは卵が入っていることもあります。卵は煮つけにして食べてもおいしいので、別で取り置いて調理してくださいませ。
マダイのさばき方
さばく際にヒレが引っかかって邪魔になるので、最初にヒレをハサミで落とします。
鱗は、鱗引きを使って落としていきます。初めて鱗引きを使うと、真横に鱗引きを動かしたくなるんですが、そうすると鱗が飛び散ってシンクの周りが汚れてしまいます。なので、上下に動かしながら横にスライドさせていきます。上下の動きを加えると鱗がさほど飛び散らず、ポロポロ取れます。
活け締めという状態のマダイは、尻尾が切られて、エラから包丁を入れて頭側の中骨が切られています。お刺身で食べるなら、野締めよりも活け締めです。
野締めは網で獲って、死んだ状態で届けられる処理をしていない魚のことをいいます。お刺身にするのであれば、生きた状態でしっかり頭と尻尾に包丁を入れた活け締めの魚が美味しく食べられます。活け締めになれば当然高くなるんですが、プリっとした食感が楽しめます。この辺は仕入れる時に意識するとよいポイントかな。
鱗取りで全体の鱗を落としたら、最後に包丁で身を軽くこそげて残った鱗を落とします。
頭を落としていきます。腹ビレの位置から1本斜めに包丁を入れて、胸ビレのラインから斜めに包丁を入れます。
半分包丁を入れたら身を裏返して、反対の身も胸ビレの位置から斜めに包丁を入れます。中骨を切り離して頭が浮いたら、ヘソの位置から包丁を入れてお腹を割いて頭ごと内臓を引き抜きます。
厚い腹膜に1本包丁を入れて、内臓の残りと血合いを水洗いします。尻尾はこの段階で落として構いません。
ここまでの作業は一気にしてしまったほうがよいでしょう。鱗を落として水洗いして頭を落として水洗いしてと、こまめに水洗いして水に触れる回数が多くなると、身が水分を吸って味が薄まります。水洗いする回数は極力少なくするのも、美味しいお刺身を食べるポイントのひとつです。
頭と尻尾はきれいに鱗を落として、余分な尾ヒレの部分を切り落とします。
頭はまな板の上に立てて、口から包丁を入れて半分に割っておくと調理しやすいと思います。エラや内臓を包丁で切り離してからきれいに水洗いして調理します。
顔の周りのお肉や尻尾の部分のお肉も非常に美味しいお魚なので、捨てずにしっかり料理するとよいかな。
血合いや腹膜をきれいに洗い流したら、軽くペーパーで水気を拭き取ります。頭や尻尾は焼き物やお吸い物にします。身はさばいてお刺身にします。
お刺身をすぐに食べない場合は、ペーパーで軽く水を拭き取って腹にペーパーを入れて、身全体をまたペーパーで包んでラップかビニール袋に入れます。そしてなるべく0℃に近い温度、1℃~2℃の冷蔵庫で保存するのがよいかなと思います。なるべくビニール袋内の空気を抜いておくと身が長持ちしやすいです。
柵の取り方
下身は腹・背、上身は背・腹の順で包丁を入れていきます。なぜかというと、基本的にアバラ骨には尻尾から頭に向かって包丁を入れたいんです。下身は腹から通して背中に通したほうが、アバラ骨をそのままの流れで切り離せるし、上身はあとから腹に入れたほうがそのままの流れでスッとアバラ骨を切り離せるからです。
タイは骨も身もしっかりしているので、身を開きながらおろしても身が割れる心配がほとんどありません。タイは基本中の基本というか、3枚おろしの勉強するにはもってこいの魚かな。
下身
腹側に包丁を入れて中骨のラインまで達したら、背中側から包丁を入れます。下のほうに力を入れすぎると、包丁が中骨の下に潜ってしまいます。中骨を見つけたら中骨の上を優しく包丁でなぞるようなイメージで切り進めます。カタカタ音を鳴らそうとすると下に力が入りやすいので、力はそんなに入れません。
まだ中骨の肉が繋がっているので、肉を削ぎ落とします。
最後にアバラ骨を包丁で切り離します。
まあまあきれいにおろせているかと思います。
上身
背ビレのキワから包丁を通して、中骨を見つけたら優しく中骨の上をなぞるように包丁を通します。
腹側も中骨の位置まで達したら、最後にアバラ骨を切り離します。
タイが3枚におろせました。ここからアバラ骨を取って柵取りをしていきます。
硬いアバラ骨が残っているので、まずは逆さ包丁で軽く浮かせて、すくい取るようにアバラ骨をかいていきます。腹膜も一緒にかいてもよいんですが、一度に腹膜とアバラ骨をかきとろうとすると身を削りすぎてしまいます。アバラ骨を1本ずつすくい取るようなイメージで腹膜をかいてください。
中骨が数本残っているので、身を背と腹に切り分けてしまいます。骨抜きで1本1本抜いていく方もいますが、タイは血合いの部分に強めのスジが入っています。骨抜きで骨を抜いても身にスジが残るので、背と腹に切り分けて包丁でそぎ落としてしまいます。
ちょっと強めのスジが残っているので、ギリギリのところで包丁でそぎ落とします。なるべくこの時に身を削りすぎないように注意はしますが、もったいないと思ってスジを身に残すと、食べたときに口の中にスジが残ります。中骨がない尻尾のほうでも強いスジが残るので、きれいに外すようにしてくださいませ。
刺身の引き方
上身の背、上身の腹、下身の背、下身の腹の4つの柵に取れました。それぞれどの向きで切ったら刺身は綺麗に切れるのか紹介します。
皮の引き方
刺身にする際は、基本的に皮が邪魔になるので、先に皮を引きます。皮引きのコツのひとつは、包丁をしっかりとまな板に押し付けるようにしながらスライドさせることです。魚の皮は背中のほうが厚くて、腹は背中に比べると皮が柔らかめです。背中は比較的力を入れてもきれいにむけますが、腹は力を入れすぎると皮が切れてしまいます。そのことを意識しながら引きます。
背中側
背中の皮を引きます。最初に少しだけ尻尾側にきっかけを入れます。この部分はどっちにしろスジが多いので、刺身にする際は使わない場合が多いと思います。
包丁を入れるきっかけを作って、包丁とまな板に押し付けるようにしながら左手で皮をしっかり引っ張るようにすると皮がむけていきます。皮が滑る場合は、ペーパーやさらしを使って皮をしっかり掴んで滑らないようにしてから包丁を入れます。
ちょっと進むたびに進行状況を確認します。
ちょっと身を削っちゃって赤いのが皮についているんですが、うっすらと白い脂の膜が身にしっかり残るように皮が引けました。まあまあ綺麗にむけているかな。
腹側
腹側の皮引きもやる作業自体は一緒です。尻尾から包丁を入れて、まな板に押し付けるようにしながら包丁をスライドさせていきます。
腹側は銀皮をしっかり身に残すように意識しながら包丁をスライドさせます。
腹側は背中側よりも柔らかいので、右手の包丁に力が入りすぎないようにしながら引きます。左手は比較的力を入れて引っ張って大丈夫です。腹側を引くときもちょっとずつ自分が切っている位置を確認しながら包丁を通していくとよいのではないでしょうか。
刺身の引き方
みなさんが刺身を切る際に考えることは「尻尾から切るのか頭から切るのか」「手前を低く外側を高く」「皮目を上にして切るのか皮目を下にして切るのか」ということだと思います。
背中側の切り方
まずは一番わかりやすい背中の切り方について紹介します。背中は、基本的に「平造り」で刺身に引きます。手前を低く奥を高くして、右側から魚の身を切っていきます。
上身の背は、頭から包丁を入れていきます。
下身の背は、角度をつけて尻尾から包丁を入れていきます。
実際に切ってみると、上身の背は頭のほうから包丁入れていけばきれいなお刺身になります。
下身の背は、頭の角度に合わせるように角度をつけて包丁を斜めに入れていけば、きれいなお刺身ができます。
背中を切る際のポイントは、手前を低く奥を高くすることと、上身の場合は頭から、下身の場合は尻尾から包丁を入れるということです。
魚のスジの向きが気になるとは思いますが、スジを切ろうとすると、刺身として成り立たないというかロスが大変なことになります。
基本的に魚のスジの向きで切り方を変えるのは、マグロやクエなどの20キロを超える魚に対してで、スジ目に沿って切ってしまうと口の中でスジが残ります。スジっぽいマダイはいるんですけれど、変に大きい3~4キロのマダイを仕入れずに、脂があってスジも噛み切れる1.5キロ~2キロぐらいのマダイを選ぶというのがポイントです。
腹側
腹側の身の切り方について紹介します。皮目を下にして「そぎ造り」という身をそぐような包丁の使い方で刺身にしていきます。手前を低く奥を高くして、左側から角度をつけて刺身に引いていきます。
無理に腹と背を同じ形に仕上げようとすると、どうやって切ったらいいのかわからなくなるだけで、腹と背はそもそも切り方が違います。背中は平造りで刺身にするし、腹はそぎ造りで刺身にします。
きっちりとした刺身にはならずにヒラッとした切り身になります。
盛り付けの際は、一切れ一切れを折りたたむようにしながら身を重ね合わせて盛り付けます。
下身の腹は、頭側から切っていきます。基本的にはロスなく刺身を作ることができます。
アバラをかいた下の部分のスジが、一番強いスジになります。腹の身をそぎ造りにした際は、軽く刃元で叩くようにしておくとスジが断ち切れて、口の中で違和感なく刺身を楽しむことができます。
部位別の刺身の違い
上の画像は、上身の背のお刺身です。
上の画像は、上身の腹のお刺身です。
上の画像は、下身の背のお刺身です。
上の画像は、下身の腹のお刺身です。
違いは、脂がのっているのは腹のほうで、刺身にした時に綺麗に形が揃うのは背の部分です。腹はアバラ骨が入っていたり尻尾の部分が細くなっていたりするので、見た目の綺麗さを求めるなら背のほうが扱いやすいのかなと思います。
腹と背のどちらにも言えることは、基本的に頭や尻尾の部分は、どうしてもスジが強くなりやすいです。腹の頭に近い部分は、魚体の中で一番脂ののった部分ですが、一番スジが強い部分でもあります。
1匹の魚体の中で、刺身にした時に一番美味しいのはどこかと聞かれたら、しっかり脂がのっているタイなら「背の真ん中」と答えます。形も綺麗で取りやすいし、スジもなくて柔らかいからです。
マダイ自体に脂が少ない時は、おそらく「腹の真ん中」が一番美味しいのかな。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。