コノシロのさばき方とおぼろ漬けの作り方をご紹介します。昔からある料理方法で、しょっぱくて酸っぱいコノシロにほんのり甘いおぼろを合わせると美味しい一品になります。
コノシロとは
コノシロは、成長したコハダのことです。コハダは出世魚で、大きさが大きくなるごとにシンコ・コハダ・ナカズミ・コノシロと呼び名が変わります。画像のサイズではコハダと呼ぶにはあまりに大きいかな。コノシロはさらに倍ぐらいのサイズまで大きくなります。夏に子どもが出始めて、冬にかけてだんだん大きくなっていくので、大きさが変わるごとに塩の入れ方や酢の入れ方も変わってきます。
コハダは出世魚で、シンコ・コハダ・コノシロという呼び方はするんですけれど、ナカズミはまず聞きません。図鑑やインターネット上にはナカズミという表記がありますが、現場では使う人がいない言葉になりつつあるようです。
コノシロの値段の付き方
コハダは値段の付き方が面白い魚で、小さいほうが値段が高い魚です。通常どんな魚でも子どもよりも大人のほうが値段が高くなります。例えばワラサはものすごく安いですし、イナダなんて1本何百円で買えちゃうような魚なのに、ブリになると急に単価が何千円~何万円に上がります。
でも、コハダに関しては小さいほうが値段が高いんです。値段のキロ当たりの単価で言うと、シンコが一番高くて次にコハダです。上の画像のサイズまで大きくなると、値段は落ちてきます。脂が乗るほどに値段が落ちていくという面白い魚です。
もちろんタイなどもあまりに大きくなりすぎて、筋っぽくなるから値段が安くなることは起きます。でもシンコはキロ1万円は余裕で超えてコハダで2千円~3千円ぐらいの間なんですけれど、コノシロになるとキロ千円もいかないので、こういった値段の落ち方をする魚は珍しいのかな。だから魚は単に脂が乗ればいいというものではないという表れかと思います。
コノシロの捌き方
コノシロを仕込む手順としては、まずは背ビレを落とします。この時の注意点は、コハダにしろコノシロにしろ背ビレの一番奥に1本長いヒレがあるので、残さないように落とします。
背びれを落としたら、ウロコを落とします。注意点としては、背中のラインや尻ビレのキワのラインにウロコを残しやすいので、身に残さないように注意しながら落とします。
次に頭と尻尾を落とします。
腹もバスッと直線に落として、内臓をかき出して氷水に浸けます。この手順自体はコハダのさばき方と一緒なので覚えておくといいのかな。
続いて血合いや内臓の残りをきれいにします。指でも取れるんですけれど、歯ブラシなどを1本専用に持っておくと作業しやすいと思います。奥の腹膜や血合いなどの内臓の残りを、ブラシでこすって落とします。
コノシロを開きます。開き方もコハダと一緒で、中骨に沿って片方の身を開きます。
続いて身を反転させて、中骨をまな板に軽く押し付けるようにしながら包丁を使って中骨を抜きます。骨が抜けて身だけになります。
アバラ骨をすき取ります。
最後に背ビレの骨が残っているので、背ビレの骨を取り外します。作業自体はそんなに難しい作業ではないのかな。
コノシロのおぼろ漬けの作り方
コノシロの下処理
ガチガチに塩をして、水分と一緒に臭みを抜きます。コハダの場合は身全体に薄く塩を振りますが、コノシロの場合は塩にまぶすような感じで、ベタベタに塩をして臭みを抜きます。
この魚は面白い魚で、脂に香りがつくというか脂の香りが強い魚なんです。そういったこともあって、シンコのほうに価値が出て値段が高くなっていると思いますが、このぐらいの大きさでも充分に美味しく食べることができるので、しっかりと下処理をしましょう。
1時間ほど経つと、結構しっかりめにコノシロから水分が抜けます。そうしたら一度お塩を水で洗い流します。
次にコノシロを氷水に塩をした時間の半分ぐらいを目安に浸けます。ここで入り過ぎた塩分やコノシロの表面の脂分が抜けます。
氷水に浸けて30分ほど経ったら、今度はコノシロを米酢と赤酢を1対1の割合で合わせたものに浸けます。使うお酢は普通の米酢でもよいんですが、僕の場合は白酢と赤酢を使います。酒粕から作った赤酢という黒っぽい色をしたお酢を使って締めると、美味しくできると思います。
浸ける時間も好みではあるんですが、僕の場合は画像のコノシロのサイズで40分ぐらいです。厚みや大きさや脂のノリを見て時間はその都度で変えていますが、手のひらを超えるような大きさのものは、30分以上は浸け込んだほうがいいかな。
40分経ったらコノシロをお酢から上げて、ザルで軽く酢を切っておきます。
黄身おぼろの作り方
おぼろの種類には、エビのすり身を使ったエビおぼろやタイのすり身を使ったものなど色々な作り方があるんですが、今回は卵を使った黄身おぼろにコノシロを漬け込みます。
黄身おぼろの分量は、全卵4つに卵黄4つなので黄身が8個に白身は4個分という割合です。サッと全体をかき混ぜて、砂糖25グラム・みりん25グラムを合わせます。今回はコノシロをしっかりめに締めるので、しょっぱくて酸っぱいコノシロにほんのり甘いおぼろを合わせて食べるために、この割合で作っています。人によっては卵黄だけで作る人もいますし、甘さは各自調節してみてください。
鍋に移して中火にかけます。ヘラなどを使って卵をグルグルかき混ぜていれば、そのうち卵が固まってホロホロのおぼろになります。
火加減は強火でも弱火でも中火でもどんな火加減でもできるんですけれど、弱火だとものすごく時間がかかりますし、強火だと卵が焦げやすくなります。この辺は経験でそれぞれ火加減を調節してください。
ある程度粒がほぐれてきたら一旦火を止めて、すり鉢に移して粒を細かく挽いていきます。卵黄だけで作ればすり鉢に移さずとも鍋の中で細かくパウダー状になるんですが、白身を入れると白身が固まって細かくならないので、ある程度火が入った段階ですり鉢でおぼろを細かくしていきます。
先程の荒さが取れて卵自体が細かくなってきたら、最後にもう一度鍋に移して卵の水分を飛ばします。人によっては最初にゆで卵を作ってゆで卵を細かくしてからおぼろにする方もいます。
火加減は弱火で、全体の水分を飛ばすイメージです。水分が飛ぶと、おぼろがサラサラになってきます。ちょっと水分があるとヘラの感覚が重い感じですが、おぼろから水分が抜けてサラサラしてきたら完成です。しっかり冷ましてからコノシロを漬けます。
おぼろへの漬け方
適当な大きさの容器を用意しておぼろを敷き詰めて、コハダを並べて再び上からおぼろをかけます。コノシロとおぼろを層にして並べていきます。
おぼろ漬けや、おからに漬け込む卯の花漬けが和食にはあって、結構昔からある仕事です。今みたいにドリップを吸収するペーパーがなかったので、吸水性のあるものに漬け込むという仕事が発展したともいわれています。古い仕事ですが、塩気とお酢の酸味とを卵のコクと砂糖の甘さが和らげてくれて美味しいつまみになるので、僕は結構好きな仕事です。
ラップをして冷蔵庫で3日間ほど寝かせます。おぼろに3日間ほど漬け込んだら、コノシロのおぼろ漬けの完成です。
食べるときには真ん中のラインから身を2つに切り分けます。ちょうど真ん中の部分に背ビレの骨が残っているので、背ビレの骨は外すように切り分けます。半身だとちょっと大きい場合は、もう半分に切って食べよい大きさにします。切っているうちにおぼろがどんどん落ちていくんですが、器に盛り付けた際に上からふりかければ問題ありません。
お皿に盛り付けて、おぼろを上から振りかけます。コノシロだけでちょっと寂しいと思ったら、ガリをスライスして添えても相性がよいです。ワサビも当然ながらよく合います。
ちょっと大きめのコハダというか、小さめのコノシロで昔ながらのお仕事のご紹介でした。最近はコハダを生っぽく仕上げたり甘めに仕上げるという仕事をする職人さんは減ってきたとは思うんですが、昔ながらの仕事もやってみるといろいろな発見があって料理の勉強になるかなと思います。お時間がある方はぜひやってみてくださいませ。ちなみに渡利のお店のコハダは、しょっぱくて酸っぱい結構パンチの効いています。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。