アワビのさばき方と蒸しアワビの作り方を紹介します。非常にシンプルながら美味しいので、お試しくださいませ。
メガイアワビの特徴
今回使うのはメガイというアワビで、ちょっとオレンジがかっていて、横から見た時に背の高い品種です。クロアワビやエゾアワビに比べて身が柔らかく、硬くなりにくい特徴があるアワビです。
クロアワビやエゾアワビはしっかり硬くなるのでお刺身に向いていますが、メガイは身がフニャフニャしているのでお刺身で食べてもそんなに美味しいアワビではありません。ただ火を入れた時に柔らかくなるアワビなので、加熱調理に向いています。
アワビの殻の外し方
今回の蒸しアワビは、殻を外してから身をきれいに洗って蒸し器にかける方法で作ります。殻を外してからアワビを蒸す理由は、洗いやすいからです。アワビは岩肌にくっついている面やヒダの裏側に砂や汚れがたまりやすいので、しっかり洗う必要があります。
薄いヘラなどでこするようにしながらアワビを外します。今回はおろし金の背中を使いますが、金属でやるとアワビの身に傷がつきやすいです。シャモジやヘラなどの木のヘラを使っても外すことができるので、作業のしやすい道具を使ってください。
貝柱がアワビの殻の中心にくっついているので、しっかりと貝殻にヘラを押し付けながらむくのがポイントです。ヘラが浮いてしまうとアワビの身を削ってしまうことがあります。
貝柱が外れたら、肝とヒモを手で優しく外して、アワビの身と貝殻を分けます。
アワビの身の下処理
アワビは高級食材なので、お店をやっていない限りはそんなに扱う機会はないと思います。だからこそ手に入った時はきっちり料理したいと思うと思うので、なるべく丁寧に作業していきたいですね。
貝柱の周りにはヒモと肝がくっついています。ちょっと軽く引っ張りながら、包丁で貝柱の周りを一周なぞるようにすれば簡単に外れます。
勾玉みたいな形をしている肝がくっついてる先端にクチバシがあります。硬いので、手で両サイドから押し込むようにすると簡単に外すことができます。アワビのクチバシは、サザエのクチバシなどとあまり変わらないので、普段サザエをさばいて構造を理解していれば分かると思います。
アワビの表面やヒダなどをひたすらタワシでこすって、砂や汚れを落とします。アワビの表面の模様は落ちてしまうんですが、気にせずガシガシこすっていきます。アワビをこすって身がカチカチになったら、一度表面をさっと水洗いします。
新鮮なアワビを使うと、身は刺激を与えられてキュッと収縮して硬くなります。火を入れれば硬さは抜けて柔らかいアワビになるので、気にせずによくこすってください。ここで塩を振る方もいますが、活きのいいアワビなら塩を振らずとも充分に身が締まります。あえて塩を振ってアワビの磯っぽさを抜く必要はないかな。
肝は砂袋になっている部分を包丁で切り落として、中を掃除します。肝を蒸してから砂袋を外して掃除する方もいますが、火を入れてから水に通すことに僕は抵抗があります。
生のうちに切り落として水洗いすると、肝にポコッと空洞があるので水道水を当ててきれいに汚れをかき出します。
アワビの蒸し方
身は貝柱の面を上にして、バットなどに並べます。なぜ貝柱を上にして蒸すのかというと、貝柱の部分が一番火が通りにくくて柔らかくなりにくいからです。火の入りがよいように上に向けて蒸します。
酒を薄く全体に回しかけ、昆布を貝柱の部分に乗せ、ラップをかけずに蒸し器に入れます。水蒸気が蒸し器の中でグルグル回ると、昆布のエキスがどんどん下に落ちていき、昆布の旨味がじっくりアワビに入ります。
今回はスチームコンベクションオーブンを使っているので温度調整もできますが、温度を調節する必要はなくて100℃近い温度でどんどん火を入れていきます。2~3時間程度蒸して、充分に柔らかくなっていれば完成です。
貝柱に串を刺してみて、まだ硬い部分があれば追加で10~20分蒸して、充分に柔らかくなるまで火を入れます。蒸しアワビは火を入れるほどに柔らかくなって旨味が増すという話もあるんですが、僕の持論では火を入れて美味しくなるのはせいぜい3時間~3時間半程度で、どんなに長くても4時間までかなと思います。それ以降は火を入れるほどにアワビの味が抜けて出汁の味が強くなって、アワビらしさがなくなってしまいます。
お店によっては3日間煮込んだアワビを出してくれるところもあるんですが、僕はアワビを2~3時間しっかり柔らかく蒸すほうが美味しいのかなという気がしています。そのほうがアワビらしさが残っていて美味しいかな。
身が縮んでしまう理由
蒸しアワビを作ったことがある方なら誰もが一度は、思ったよりアワビが縮んで小さくなってしまった経験があると思います。アワビが縮むのは、火の入れ方や下処理の仕方よりもアワビの鮮度が原因です。
アワビは生命力が非常に強いので、エサをあげなくても獲ってから生け簀の中で1~2週間余裕で生きます。見た目は水分を含んでいるので大きさは変わらないんですが、実際は何週間もエサを食べていないので、身自体が痩せてしまっています。貝は水分を多く含んだ食材なので、火を入れると細胞が死んで細胞の間にあった水分が抜けます。そのため、そういったアワビを仕入れてしまうと、蒸したときに思った以上に身が縮む現象が起きます。
見た目は活けの新鮮なアワビに見えるのに、実際は身が痩せて火を入れると縮んでしまうこともあるので、経験と市場の人との付き合いで判断してくださいませ。
アワビの切り方・食べ方
お寿司などシャリと一緒に食べるときは、肝を裏ごしした肝ソースと一緒に食べると美味しいと思います。でも、蒸しアワビ単体で食べるときは、ちょっと甘さがある肝ソースよりもシンプルに昆布と酒のシンプルな味を楽しむのもよいのかなと思います。
食べる際は、適当な大きさに切って盛り付けるだけです。肝は普通に切って盛り付ければよいですし、アワビの身は波切りといって包丁を左右にウネウネ動かしながら切れば美味しく食べられます。厚さは一口で口に入るぐらいの大きさで、しっかり厚みを持たせて切ると、歯ごたえがあり、噛むほどにアワビの旨味が出てきます。
ちょっとだけ大きめに贅沢に切ってお召し上がりくださいませ。充分に柔らかく蒸していれば、隠し包丁を入れずともおいしく食べることができます。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。