包丁のソリについて皆様関心がお有りなようですので、少しまとめてみたいと思います。
皆様関心があるのはやはり柳葉包丁でしょう。
刀にも似たこの包丁は美術品のような魅力もありますしね。
柳葉包丁というのは刺身を切るための包丁です。
刺身というのはただ切るだけの料理。
包丁の切れ味が刺身の味に直結します。信じられないという方は、一度切れない包丁と切れる包丁で同じ魚を切り、食べ比べ得てみると良いと思います。
予想以上に味に差が出ますんで。
要するに柳葉包丁は切れ味が命ということです。そして、その切れ味の核となるのは切っ先の反りでもあります。
何故柳葉包丁には切っ先の反りが必要なのか?
理屈的な話をしますと、刃物というのは円運動をさせる事で切れ味を発揮します。
生ハムやパンを切るスライサーを想像して頂けると解りやすいかと思います。直線運動では生ハムやパンなどの切りにくい食材をあそこまで綺麗には切れません。
じゃぁ包丁も丸くするかって?
バカ言っちゃいけません。
丸くしたら狭い厨房で場所をとるし、何より、包丁を丸くしたら今度は手を直線運動しなきゃならないじゃないですか。
だから、刺身を引くときは包丁の刃元から切っ先にかけて腕をなだらかに円運動させるってわけです。円運動も、腕には可動域の限界ってもんがありますんで、最後は柳葉包丁の反りを使って断ち切るというわけですね。
包丁の抜けの話にもつながりますが、柳葉は切っ先に向かって薄くなるという構造をしています。最後に食材から切っ先の反りと抜けを使って食材を断ち切るわけであります。
その昔、というか今でも、タコ引き包丁という直線の柳葉包丁もあったのですが、今では美術的なこだわりがある人が使うくらいでしょう。
理屈が解っているかは抜きに、みなさん本能的に柳葉包丁の反りが構造的に優れているということには気づいているのではないでしょうか。
さて、では一体どんな風に柳葉包丁は研げば良いのか?
気になるのは皆さん包丁の研ぎ方でしょう。
包丁の研ぎ方は別記事にまとめますので、まずは包丁の理想の形について見てみましょう。
柳葉包丁の理想の形
さて、以前の記事でも書きましたが、包丁の理想の形は買った時の形です。
一流の鍛冶屋と一流の研ぎ師が考えて考えて、経験から作った包丁が最も理にかなっているわけであります。
(まぁ、あんまり大きな声じゃ言えませんが、しばしば適当な仕事をする包丁屋にもお会いします。)
さて、そんな包丁も研げば当然、減っていきます。研ぐ頻度や砥石の使い方にも寄りますが、3年も使って研いでを繰り返せば、買った当初の包丁の形から、自分の癖が包丁に現れ始めているかと思います。
柳葉包丁の理想の形が頭に残っていれば数ヶ月に一度、自分の包丁をじっくり見つめることで、自分の癖が解ります。それを少しづづ修正していく事で、包丁を綺麗に使えるって訳であります。
以下、私が綺麗に研げていると思う柳葉包丁を何本かご紹介いたします。
綺麗に研げている包丁の反り(切っ先の形)
こちらは購入して間もない柳葉包丁。研ぎ跡が少し荒いですが形は綺麗です。シノギ筋から切刃まで、切っ先にかけてゆるい曲線を描いております。
さて、こちらは研ぎ始めてから1年程という感じの柳葉包丁です。シノギ筋はゆるい曲線を描き、切刃もシノギ筋に応じて緩い曲線を描いているのが解りますでしょうか?
こちらは使い始めて2年程たった柳葉包丁。写真で見ると少し切っ先に向かって切刃が狭くなっているように見えます。理想的なシノギ筋は下の写真のようなシノギ筋では無いでしょうか?
また使い初めて2年もたつと多少包丁も短くなってきますので少し刃先が上に向いて来ています。これは柳葉包丁の峰があらかじめ刃先に向かって下にカーブしているため、包丁が短くなると当然ながら刃先は上に向くので問題ありません。
これは使い始めて9年ほど経った柳葉包丁。だいぶ短くなっています。峰の下向きのカーブは殆ど残っていないため、切っ先は上に向いております。また仕込み用に使っている包丁ですので刃こぼれが目立ちますし、シノギ筋も若干ながら崩れているように見えます。この長さの包丁の理想的な形は下の写真のような形では無いでしょうか。
もう少しだけシノギ筋が上がっていると綺麗な形ですね。また切っ先も折れた切っ先を無理に尖らせたため少しだけ短くなってしまったおります。もう少しなだらかなカーブを描きたいところです。
いかがでしたでしょうか?
少しは包丁の理想の形が見えてきましたでしょうか?
他にも包丁については、蛤刃、直刃、丸刃と言った包丁の断面の構造もございます。そのことについては別の記事でまとめてみたいと思います。
ではではまた次回。