カワハギのさばき方と肝和えをご紹介します。以前の記事でもカワハギの肝和えを紹介していますが、今回は口の中で肝の濃厚さがあとを引くようなねっとりとした食感のカワハギの肝和えの作り方をご紹介します。ぜひお試しくださいませ。
カワハギの仕入れポイント
カワハギは11月から春先までの寒い時期に肝が大きくなるので、冬が旬ではあるんですが、夏のカワハギは肝が小さい代わりに身に脂がのります。あまり夏にカワハギは食べないと思うんですが、身を食べるんだったら夏のほうが美味しいです。基本的には肝と一緒に肝醤油や肝ポン酢で食べることが多いので、一般には冬が旬とされています。
カワハギを仕入れる際のポイントは、大きく2つあります。まずは鮮度がよいことです。今回は、市場の水槽で生きた状態で買って、首と尻尾に包丁を入れて血を抜いた活け締めのカワハギです。
もうひとつのポイントは、なんといっても肝です。カワハギを仕入れたはいいけれど、肝が小さいと肝和えの際の魅力に欠けてしまいます。軽くお腹を触ってパンパンに張っているものや、肝が充分に詰まっていそうなものを仕入れるようにしてください。
カワハギの捌き方
カワハギをさばく際は、まずはカマ骨のラインに薄く包丁を入れます。カマ骨のラインはちょっとカワハギをたわませると、硬い骨が浮いてきます。浮いてきたカマ骨のラインぎりぎりに包丁を入れます。活け締めにしていない場合は、カワハギの中骨のラインに1本包丁をザクッと入れて、頭を落としてからさばいていきます。
頭をつかんで肝を抜き取ります。しっかりと大きい肝が詰まっています。人によってはカマ骨に包丁を入れずに、頭から内臓を抜く方もいます。でも、カマ骨に包丁を1本入れないと、頭を抜き取る際にお腹側の身が頭側についてきてしまい、腹が削れてしまいます。刺身にできる部分が削れてロスを出さないためにも、カマ骨ラインの表面に軽く包丁を入れてから頭をちぎるようにしてください。
肝を取ると、身体側に浮き袋や腹膜や血合いが残っているので、手できれいに掃除します。血合いは歯ブラシでこすると、きれいに落とせます。そのあと、カワハギの身をきれいに水洗いします。
カワハギの内臓の処理をします。注意点はなんといっても苦玉です。苦玉は魚の胆嚢のことです。胆嚢を潰して出てくる胆汁は非常に苦味があって、とてもじゃないけど食べられる味ではなくなります。苦玉を潰さないように内臓を取り除きます。
優しく手で支えながら内臓を引き抜いてくると、自然と肝も外れます。
口から食道の部分で強めに内臓が繋がっているので、多少力を入れて引き抜きます。
さばく際の注意点は、胃袋を破らないようにすることです。カワハギは貝類などをエサにして生活しているので、胃袋の中に砂利や貝殻などの硬いジャリッとしたものが入っている場合があります。胃袋を傷つけてしまうと、砂利が肝に付着してしまいます。せっかく滑らかな肝なのに一気に口当たりが悪くなるので、胃袋は破らないように注意しながら肝を取り扱ってください。
肝の周りの胃袋や腸など他の内臓を取り外します。他の内臓を取り外して肝を水洗いする前に、肝に走っている血管の掃除をします。肝はそのまま食べるため、血管が残っていると味に影響が出ます。
内臓から2つの玉を一緒に取り出しました。僕はオレンジ色が苦玉で、黒いのはカワハギの心臓なんじゃないかと思っています。黒いほうが苦玉だという人がいたり、両方2つセットで苦玉だという人がいたりして、厳格な区別は板前の人でも分かっていません。わかる方がいたら教えてほしいな。
黒いほうは、潰しても固形状のままで、苦みがうつることはないと思っています。
オレンジ色は、見るからにプニプニと液体が詰まっていて、間違いなく潰しちゃいけないという気がするので、僕の中ではこっちが苦玉です。
頭はカマに多少食べられる部分が残っているので、のちほどカマの部分の身も取り出します。カワハギは結構いい出汁が出るので、小さいカワハギの場合は皮をむいて出汁をとるのに使ったりもできます。ぜひ利用して召し上がっていただけたらなと思います。
続いて身と頭を処理します。身を処理する際は、まずはヒレを取り除きます。残っている血合いや内臓の汚れもきれいに水洗いしてからさばきます。
頭と身の皮をはぎます。名前の由来にもなっている通り、外側のザラザラした硬い皮が簡単に手ではげることからカワハギと呼ばれています。ちょっときっかけを作って、外側の硬い皮を手でむいていきます。頭側も口先を落としてきっかけを作れば、簡単に皮をむくことができます。
身のほうは通常の3枚おろしです。身をおろす際のポイントは、骨をよけながら3枚おろしにすることです。通常の魚のようにヒレのギリギリから包丁を入れて3枚おろしにしようとすると、表面にあるちょっと硬めの骨に包丁が引っかかってしまいます。
ヒレのギリギリにある硬めの骨をよけながら、包丁を入れます。カワハギ自体は骨格が規則正しいというか非常におろしやすい魚なので、3枚おろし自体はそんなに難しくありません。骨も比較的硬くて身もしっかりした魚なので、多少ならめくりながらさばいても身が割れるような事はありません。
頭のほうは、カマの部分の太い骨の内側の三角形部分の身が食べられます。切り出して硬いカマ骨を外すと、ひと切れの身が取り出せます。
残った頭や身は出汁をとると美味しいので、味噌汁やお吸い物にしてもいいのかな。
ここまできたら、身のほうの腹膜や中骨、薄皮を処理します。腹膜を取り除き、血合い骨を骨抜きで引き抜きます。
骨の入っていた部分で身を半分に渡し、薄皮を引きます。カワハギは外側の厚い皮をむけばいいのかなと思ってしまうんですが、薄い皮も残っているので包丁を使って皮を引きます。薄皮がちょっと残ってしまったら、包丁で薄皮を削ぎ落とします。
カワハギの薄皮を引くのは実は難しいです。あえてちょっと厚めに皮を引いて、皮を茹でて刺身に添える方もいらっしゃいます。もし皮を厚く引いてしまった場合は、皮を茹でてお刺身に添えたりすると美味しく食べられます。臨機応変に対応してくださいませ。
身をさばいたら最後に身に薄く塩を振って、ペーパーに包んで冷蔵庫で保管します。塩を振る意味は臭みを抜いて塩味を入れるというより、身の水分を抜くためです。塩を振ったあとに水洗いする工程はないので、塩は振りすぎないようにしてください。身の水分が抜けて昆布締めのようなねっとりとした食感が出ます。
今回は濃厚なカワハギの肝和えなので、身のほうもねっとり感を出して、口の中にしっかりと旨みが残るような食感に仕上げたいのでこういう処理をします。
肝の下処理
肝を一度水洗いします。肝和えにする場合は、生で肝を濾したりサッと肝を火に通してから身と和えたりします。でも今回は濃厚なカワハギの肝和えなので、濃いめの塩水に氷を入れて浸け込んで冷やします。
どういう理屈かは僕もいまいち分かってはいません。氷水に塩を入れると、凝固点が下がる影響で0℃以下になると思うんですが、そこにカワハギの肝を1時間ぐらい浸けておくと、すごくねっとりになります。
生の肝はプニプニしていますが、氷塩水に1時間ぐらい浸けると、紙粘土みたいなねっとりとした食感に変わってくるんです。肝の温度が下がって、肝の中に含まれている脂分がねっとりと固体になっているのかな。
そのまま冷凍庫に入れたこともあるんですが、解凍した際に肝と脂分が分離してしまいました。結構多めに塩を入れた氷塩水の中に浸けておくと、脂と肝が分離せずに、ねっとりとした紙粘土のような食感に変わっていきます。興味があったらぜひ試してほしい調理法です。
1時間ぐらい置いておきます。
上の画像は、1時間ほど置いたカワハギの肝です。ちょっと押すと、指の跡が残るような感じです。普通肝はプルプルッとしているので、触ると跡は残りません。指の跡が残るようなねっとり感に仕上がっています。
肝は氷水からあげて、ペーパーに包んで水気を切ります。肝に充分にねっとり感が出て、身も水分が抜けてねっとりとしてきたら、それぞれ和えて食べるだけです。
カワハギの肝和えの盛り付け
お好みの大きさにカワハギの身を刻んで、肝を包丁で叩いてペースト状に滑らかにした肝を乗せます。
あとは醤油を適量垂らして、カワハギの身と肝をしっかり和えます。肝と和える際のポイントは、醤油をしっかりめにきかせることです。肝は特有の生っぽさや生臭さが出やすいので、醤油みたいなしっかりと香りのある調味料で肝の味や臭みを感じにくく旨味を感じやすくします。
そのまま食べても充分美味しいんですが、お好みで薬味を添えます。芽ネギを上に散らしても美味しく食べることができますし、香りづけにユズを振っても美味しく食べられます。ポン酢やスダチ、ワサビも合います。お好みの薬味を振ってお召し上がりください。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。