カステラ玉子(鮨屋の玉子焼き)
江戸前鮨の締めとい言えば、まるでカステラのような玉子焼き。昔はこれが鮨屋の玉子焼きでした。
海老と山芋を40分、ひたすら擦り、玉子を合わせる。弱火でじっくり30分以上かけてやく玉子焼きです。
時間と手間を惜しまずに作るその玉子焼きは職人の仕事と呼ぶにふさわしい物だったと思います。
お客様を笑顔にしたい、自分の腕を披露したい、東京で一番美味しい玉子を焼きたい、それぞれ思いは違えど、目指す場所は一緒だったと安易に想像出来ます。全てはいい仕事をする為。時間や手間など惜しむはずありません。それでこそ職人。そんな時代だったと想像します。
時代は流れ、今や令和。かつてはオーナーシェフが当たり前だった我々の業界も、今や経営者と料理長と立場が別れるお店が多くなってまいりました。働き方改革、企業は手間と暇を惜しまなきゃ店舗を経営していく事が困難な時代になりました。
無駄を省いて最大利益を目指す。そんな時代。
カステラ玉子は確かにうまい。鮨屋の玉子焼きはこうでなきゃならん。そんなことは百も承知。
でもね、時代がそれを許しちゃくれなくなりました。
飲食業も週休2日が当たり前の時代。お客様の笑顔のために、将来の自分の為に、そんな仕事をする板前はもはや絶滅危惧種でしょう。
サラリーマン板前。そんな言葉もよく聞きます。
包丁を夢中になって研いでいる見習い板前、休日に市場に行き、休み明けには先輩に色々質問をしている小僧、先輩を越えようと必死になっている中堅、そんな板前を見る事も減ってきたと感じております。
でもね、まだまだいるんですよね。都内でも地方でも、日本人でも外国人でも、若者でもおじさんでも、必死になって仕事している板前が。
そんな人らがこのカステラ玉子【鮨屋の玉子焼き】を守っているんじゃないでしょうか。
長くなりましたが、レシピをご紹介いたしましょう。
カステラ玉子のレシピ
- 海老(芝海老)のすり身100g
- 山芋30g
- 砂糖30g
- 塩5g
- みりん15g
- 出汁50g
- 玉子10個
上記の材料を準備してください。甘めがお好きでしたら砂糖は増やしてください。
大きなすり鉢があれば準備しましょう。なお伊達巻のようにオーブンで焼く事も可能ですが、ここでは割愛します。他のレシピサイトにも色々出て来ますしね。
この玉子焼きはどれだけ空気を含ませる事ができるかですので、根気よく続けてみてください。
カステラ玉子の焼き方
- 生の芝海老の殻を剥き、むき身を100g用意する。(身は背中から開き、塩水で洗い綺麗にする。)
- 海老の身を包丁で細かく叩き、すり鉢に移し、擦る。
- ある程度粘り気が出て来たら塩5gを入れまた擦る。
- 身がいわゆるすり身になったところで山芋を入れる。(山芋は皮を向いて卸し金ですりおろしておく)
- 山芋と海老を混ぜ合わせるようにすり鉢で当たる。
- ある程度混ざったら砂糖を加え、出汁とみりんを少しづつ加えていく。(少し加えては擦り、少し加えては擦りを繰り返す。)
- 完全に混ざったところに玉子を加える。(玉子はあらかじめボールに取ってかき混ぜておく。玉子も少しづつ加えていく事。)
ここまでで約50分、とても根気のいる作業です。
ここからじっくり焼いていきます。
- 玉子が混ざったら生地を板に流しますが、その前に事前に板を温めておきましょう。温度が低いと焼き上がりに玉子が板にくっついてしまいますし、温度が高いと焼き上がりが焦げてしまいます。何度も繰り返し自分なりのポイントを見つけましょう。
- 板が温まったら生地を流し入れ弱火にかけます。
- 少し大きめの蓋をしてこまめに板を動かしながら火を通していきます。
- 全体がうっすらと固まったら(全体の8割ほど火が入ったら)一度蓋にとりひっくり返します。
このひっくり返す作業がとても難しいです。卵液を少し残しておき、玉子を取り出してから板に入れて、玉子焼きを戻すという方法もございます。
- 裏面に火が通れば焼き上がり。
ひっくり返すのが難しい場合は片面を少しだけ焼いてオーブンに入れてしまうという手もあります。
また玉子焼きはうまく焼けるとふつふつと膨らんできます。その場合は木の蓋に菜箸などを噛ませ少し高めにしてやると良いでしょう。
十分に高さが出たら蓋で上から抑えてやると形良く仕上がります。
このカステラ玉子はほとんどが感覚の仕事です。一度レシピを見たからと簡単にできる仕事ではありません。何度も練習し、膨らみ具合や、焼き加減、前回とは何が違ったのかを考えながら、自分なりのレシピを作りあげてください。
たくさんの料理屋がある中で、あなただけの玉子焼きがあるなんて素敵な話だと思いませんか。
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