この記事では魚を干物にするメリット、干物にむいている魚、干物の作り方を紹介します。
干物の作り方(動画版はこちら)
干物とは?
干物とは、魚介類を干したものの総称。
微生物が繁殖可能な自由水の割合を低くすることで、保存性を高めた食品である。
一口に干すと言っても様々な干し方があり、例えば丸干しや開きと言う様に、魚の姿により区別する事もあれば、天日干し、陰干し、風干し、等、干し方による区別もある。
また醤油干しや味醂干しと言った味付けによる区別も存在する。
茹でて、もしくは、焼いてから干すと言う方法もあれば、鰹節の様に蒸してから干しカビをつけるなど、様々な方法がある。
身近なな干物の具体例
アジの開き、ししゃも、鯖の味醂干し等、魚の干物は一般的だが、カラスミやバチコ(ナマコの卵巣を干したもの)、キンコや干しアワビ、スルメなどの珍味も干物に含まれる。
また、煮干しや鰹節、ホタテの貝柱など、主に出汁を取る為に用いる食材も干物の一種である。
干物のメリット(干物が美味しい理由)
干物とは単に保存性を高めた食材と思われがちだが、魚を干物にするメリットは保存性だけではない。旨味の凝縮と焼き上がりの水分量である。
干物の保存性
食品の腐敗には水分が大きく影響する。
食品の腐敗とは微生物が有機物を変質させる事により起きる。
微生物は、食品の栄養素、温度、空気(酸素や窒素)、水分、これらの条件が揃う事で活発に活動する。
つまり、それらを管理する事で食品の腐敗を防ぐ事が可能となる。
例を挙げると、
- 冷蔵・冷凍は温度を
- 真空パックや缶詰は空気を
- 干物は水分を
と言う様に、食品の保存は、腐敗の原因となる微生物の活動を抑える事と言える。
冷蔵冷凍技術や真空技術が発達する以前に、手近で簡単に食品を保存できたのが干物と言うわけだ。
旨味の凝縮(干物が美味しい理由)
食品の保存が主な目的ではあるが、干物のメリットはそれだけでは無い。
その一つが旨味の凝縮である。魚と言うのは食材の中では旨味が薄いタンパク源であるが、
干物は食品の水分を抜く為に相対的に旨味の濃度が濃くなると言える。
また、干物は長期熟成の側面もあり、ATPが旨味成分であるIMP(イノシン酸)に分解される事も干物の美味しさに一役買っている。
旨味が薄い魚の旨味を凝縮する事で、生魚には無いしっかりとした旨味を味わう事ができる点も干物のメリットと言える。
干物の水分量(干物が美味しい理由)
人が美味しいと感じる要因の一つに食品の水分量(パサつき)があげられる。
赤身肉のステーキを想像すればわかりやすいかと思うが、焼きすぎてパサついた肉と程よく火が入り、ジューシーな肉とでは、個人差はあれどジューシーな肉を美味しいと感じる人が多いはずだ。
※サーロインなどの脂の多い肉はその脂がパサつきを補うので、例外である
※また海苔の様に、乾燥させる事で、食感や香りと言う別の美味しさの要因になる場合もある。
ここで、魚を生のまま焼くのと干物にしてから焼くのでは、焼き上がりにどちらが水分が多く残るのかという実験がある。
結果は意外にも干物にしてから焼いた方が身に水分が多く残る。
これは干物にする事で、身の表面が薄い膜で覆われる為、焼いた際のドリップがほとんど出ない事が原因である。
- サンマを焼いた時を想像するとわかりやすい。生のサンマをそのまま焼くと、魚の細胞が壊れ水分が多く出る。
- 一方アジの干物を焼いた時は水分はほとんど落ちない。
結果として、焼き上がりには、干物の方が水分含有量が多くなる為、身のパサつきを感じづらくなると言うことになる。
干物にして美味しい魚
干物と言うのはあくまで焼き魚の一種であり、パサつく魚は得てして干物に向いていない。
よって干物に向いている魚は脂の乗った青魚(アジやサバ等)や深海系の脂の強い魚(のど黒やキンキ、金目鯛等)または水分量の多い魚(カマスやワカサギ等)と言うことになる。
干物に向いていない魚の例としては、マグロの赤身や、カツオなどのさっぱりとした魚。
またタイやヒラメの様に元々水分量の少ない魚は干物にするとパサつきが目立つため、そのまま焼いた方が美味と言える。
自家製の干物をオススメする理由
干物は魚を干すスペースさえあれば自宅でも簡単に作ることが出来ます。
また、既製品の干物には酸化防止剤はもちろん、甘味料や保存料など様々な化学調味料が混入している場合があります。
体に良いと思って食べた魚が化学調味料まみれでは本末転倒。
という事で、少々手間ではありますが、干物は自家製をオススメしております。
干物の作り方
干物の作り方は味付け(脱水)と干しの2工程に分けられます。それぞれ解説します。
干物の味付け(脱水)
干物を作る際はまず塩による脱水が必要である。(塩をせずに干すと腐敗する可能性が高い)
塩の入れ方は2種類ある。
ザルに並べて薄めに塩を振る方法と、塩分を調整した漬け地に漬け込む方法だ。(漬け地をみりんにすればみりん干し、醤油を加えれば醤油干しとなる)
漬け地の目安としては10%程度の塩分濃度の地に30分〜2時間(魚の大きさにより)を目安に調整
振り塩、脱水、それぞれのメリットとデメリット
干物に味を入れる方法を2つ紹介したが、両者のメリットとデメリットは、
- 振り塩はしっかりと脱水できる点で漬け込みよりも優れているが、塩の加減が難しい。
- 漬け込みは味が均一に入る点で振り塩法よりも塩加減がしやすいが、水中に旨味流れ出てしまう点で、振り塩法よりも劣っていると言える。
干物の干し方
味を入れたら魚を干せば干物が出来上がる。
干物の干し方は様々で、
- 串に刺して、又はザルなどに並べて日陰で干す陰干し
- 風に当てて(冷蔵庫の送風や扇風機を利用)干す風干し
- 日中に太陽の光に当てて干す天日干し
- 軽めに一晩だけ干す一夜干し
など、状況により様々な干し方ができる。
又、市販の脱水シートを使っても干物は作ることができる。
干す時間は一概に言えないが、最低でも一晩は干した方が良いと言える。
どんな方法で干すにしても、ポイントは干しすぎないこと。
欲しすぎると魚の水分が抜けすぎて、パサつきの原因となるからである。
程よく水分が抜けたらあとは焼くだけです。興味がありましたら干してみてくださいませませ。
では。