バラけず筋を残さない大トロの切り方と、研いだ包丁と研いでいない包丁の比較をご紹介します。
大トロの切り方
基本的なことを紹介すると、マグロの大トロは筋が細かく入っているので、なるべく筋を口の中に残さないように切るのが美味しく食べるコツです。
筋に対して垂直に包丁を入れて、さらに筋の流れに沿って包丁を入れていきます。
「筋に対して垂直」というのは、入っている筋をなるべく短くなるように包丁を入れることです。上の画像の柵の場合、横長に置いたら柵に対して垂直に包丁を入れることになります。
もう一つはあまり聞きなれないかもしれないですが、「筋の流れに沿って切る」ことが基本的なセオリーです。上の画像の柵は上から下に向かって筋が流れているので、包丁も上から下の流れに沿って使います。
逆に「筋の流れに逆らって切る」というのは、筋と逆の方向に包丁を入れることを言います。筋が下から上に流れている場合、筋に対して包丁を上から下に入れることを「筋の流れに逆らって切る」と言います。
なぜ筋の流れに沿って包丁を入れるのかと言うと、経験があると思うんですが、マグロは筋のところで身がバラけるという現象が起きます。マグロの身を切った際に、筋のところで身がバラバラほぐれてしまう現象です。
切る際に身に負担がかかればかかるほどバラけやすくなるので、身の負担をなるべく少なくするために流れに沿って包丁を切り進めていきます。
断面を見ると分かりますが、筋に逆らうようにマグロに包丁を入れると、マグロの身がバラけやすくなってしまいます。
上の画像の切り身は、下から上に流れる筋に対して、上から下に包丁を入れました。筋に逆らうように包丁を入れたので、バラけてしまいます。
身がバラけないように、筋に対して垂直に、流れに沿ってマグロを切ります。この時に包丁の切れ味が良いと、スッと一発でマグロの切り身を切ることができます。包丁の切れ味が悪いと、刃をキコキコ何往復もしないと切れないので、包丁の切れ味は重要です。
切り身への包丁の入れ方
お店によるとも思うんですが、ここからさらに筋に包丁を入れることで、より口の中の筋の残りを減らすという包丁の使い方があります。この時も包丁の切れ味が重要になってきます。
マグロの切り身の筋に包丁を入れていきます。切り身にも筋の流れがあり、上の画像の切り身の場合は、手前から奥に向かって筋が流れています。
先ほどの「大トロの切り方」の理屈からいくと、筋の流れに沿って手前から奥に向けて包丁を入れると思われるかもしれませんが、実は逆です。切り身にした状態は、筋目に逆らうように包丁を入れたほうが、筋が切りやすいんです。
切り身にした段階で、マグロの身はだいぶほぐれやすくなっています。筋の流れに沿って包丁を入れると、身が包丁の動きに合わせて伸びてズレやすくなります。身は切れるけど筋が切れない現象が起こるので、切り身はマグロの筋の流れに逆らうように包丁を使うというのがポイントです。
奥から手前に筋が流れている場合は、マグロの切り身の「奥」を軽く押さえて、包丁を押すように筋を切ります。
切れ味の比較
筋に対して切れる包丁と切れない包丁でどれぐらい差が出るかというのを紹介します。参考のために包丁を2本用意しました。
1本は、僕が愛用していて、しっかり研いだ本焼き包丁です。包丁を爪に乗せるとキュッと止まるような状態まで研いであります。
もう1本は、10年ほど愛用している柳葉包丁です。今回は参考のために、普段使いつつも3日間研がずに使い続けました。結構刃が落ちてきている状態です。包丁を爪に乗せると、爪がツルツル滑る状態まで切れ味が落ちています。
切れない包丁と切れる包丁で切った切り身を比べると、パッと見はどちらもしっかり包丁が入っているように見えます。
ところが、切れない包丁で切った切り身を開いて見ると、しっかり筋を切っているように見えて、実際は全然筋に包丁が入っていません。
切れる包丁で切った場合は、筋にもしっかりと包丁が入っていて、身に入れた深さと同じ深さまで筋が断ち切られています。
しっかりと研いで切れ味の良い包丁を使うと、美味しい料理を作ることができます。マグロを切る機会はそうはないとは思うんですが、包丁を研いだり筋の目を見たり熟成させたりと、小さな作業の積み重ねで美味しいお寿司ができ上がっていくのかなと思います。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。