秋口に出回る子持ち鮎の甘露煮の作り方を紹介いたします。
子持ち鮎の下処理
ヌメリの落とし方
最初に鮎を掃除します。鮎は内臓ごと食べてしまうので表面のヌメリを取るだけです。手にひとつまみ塩を取って、軽く表面をこすってヌメリを落としていきます。
鮎に限りませんが、ヒレのキワはヌメリが残りやすいのでヒレを立てて強く塩で揉みます。
鮎を氷水に通して塩ごとヌメリを落とします。
鮎は内臓ごと食べるので、軽くお腹を押して肛門から汚れを押し出してください。
ウロコは取る?
包丁でウロコをとってもよいですが、鮎はウロコ付きのまま焼いて食べるほうが香ばしくて美味しいので、好みで処理してください。
ウロコを残したい場合は塩で揉んで洗えばいいですし、ウロコごとヌメリもしっかり落としたい場合は、包丁でこそげるようにして表面をなでればいいでしょう。注意点としては、子持ち鮎はお腹にパンパンに卵が入っているので、あまり強く作業をし過ぎると腹が破れます。その加減だけしっかりするようにしてください。
子持ち鮎の素焼きの仕方
仕上がりのためにすることは?
子持ち鮎はお腹にパンパンに卵が詰まっていて、そのまま焼くと卵が膨張して腹が裂けるので、卵の逃げ道を作っておきます。表になる面に包丁を入れると、膨張した卵が包丁の目から顔を出します。
素焼きにする際は串を打って鮎をたゆませてから焼くと仕上がりに動きが出るので、腹に包丁を入れたら串を打ちます。
串を打つと卵が見える仕上がりになり、料理の見た目がよいのかなと思います。
素焼き
串を打ったら鮎を焼きます。強火でサッと焼くというより、じっくり鮎の身の全体を乾かしながら焼いていくイメージです。塩は振らずに、160~170℃ぐらいでじっくり時間をかけて焼いていきます。
焼く際にヒレが焦げやすいのですが、ヒレを焦がすと甘露煮にした際に焦げた部分がボロボロと崩れます。焦がさないようにじっくりじっくり焼いてください。
鮎が焼けたらザルに取り置いて、常温まで冷まします。
子持ち鮎の炊き方
煮汁の作り方
鍋に水をはり酒を加えます。そこにみりんと、少し多めの三温糖を加えます。最後にお酢を一回し程度加えます。
お酢を入れる理由は骨を柔らかくするためです。お酢を入れてじっくり炊くことで骨まで食べられる鮎の甘露煮になります。仕上がりが酸っぱくなるのではないかと心配になるんですが、熱とともに酸味がどんどん飛んでいくので、気にせず一回し入れてください。
鮎の並べ方と隙間の埋め方
先ほど焼いて冷ました鮎を煮汁に浸して炊いていきます。ポイントは鮎がしっかりと煮汁に浸かっていることです。また、隙間がありすぎると煮てる際に鮎が動いて煮崩れしてしまいますので、なるべくちょうどいい大きさの鍋で炊いてください。
鮎に串を打たなければ尻尾が浮くことはありませんが、串を打った場合は鮎を並べると尻尾が浮いてしまうので、立てて並べます。
鍋の隙間があるようなら、鍋の中にペーパーを丸めて詰めておくと鮎が踊りません。それから火にかけてください。
炊き方(1回目)
鮎が浮いてくるので、上からペーパーで蓋をしてしっかりと全体に煮汁が回るようにします。この状態で沸騰するかしないかギリギリのラインで火を入れます。
周りからフツフツと沸いてきたら、火をごくごく弱火にしてこのまま1時間程度煮込んでいきます。
煮汁の調整
火にかけている際は水と酒を割ったものを加えて、必ず鮎が煮汁に浸かった状態になるように水の量をキープして下さい。一気に加えると温度が下がるのでちょっとずつ加えて、沸いたらまた加えるようにしてください。
休ませ方
1時間経ったら火を止めてそのまま半日程度鍋ごと鮎を休ませます。時間はかかりますが、こうすることでしっかりと甘みが鮎全体に回ります。
炊き方(2回目)
鮎を休ませたら再び火にかけます。みりん少々と同量程度の醤油を加え、また1時間程度ゆっくり火を入れていきます。ペーパーの上から醤油をかけるとムラになりますが、ゆっくり時間をかけて煮詰めていくと、そのうち醤油が均等に馴染んでいくのでペーパーについた醤油のムラはさほど気にせずに作業してください。
この時も煮汁が減らないように酒と水を割ったものをこまめに調整しながら火を入れてください。
この時は薄味で構いません。煮物の基本でゆっくり少しずつ味を濃くしていくことで中まで味が入りやすくなります。
煮物全般そうですが、魚の鮮度がいい場合はショウガなどを入れる必要はなくて、魚の鮮度がちょっと悪くて臭いが出てしまうような場合はショウガをこの時に一片加えてもいいと思います。魚の状態を見てショウガを加えるかどうかを判断してください。
前日に1時間、当日に1時間、合計2時間ほど火を入れました。
炊き方(3回め)
ペーパーを外し、みりんと醤油を加えて鮎が鍋底につくギリギリまで煮汁を煮詰めていきます。背中に味が入っているかどうか心配になるとは思うんですが、2時間ペーパーで蓋をした状態で煮ているので背中にもある程度味は入っています。ペーパーをしたままだと蒸気がなかなか飛ばないのと、煮汁がどれぐらい煮詰まったかが分かりづらいので、僕はペーパーを外してこのまま煮詰めます。
10分に1回程度全体に煮汁を回して味を入れます。鮎の背中が少し浮いているのが気になる場合は、ペーパーをしたまま煮詰めてもいいとは思います。ただ、煮詰り具合がわからず煮詰まりすぎて鮎のお腹が鍋底につくと焦げるので、その辺の加減をうまくしながら煮詰めてください。鮎の背中が半分ほど浮いてくるぐらいまで煮汁を詰めます。
再び鮎を冷まします。温かいうちに触ると鮎が崩れるので、しっかり冷ましてからザルに取り置きます。できるだけ鮎の形を崩さないように優しく取り扱うようにしてください。
残った煮汁をザルにペーパーをかませて濾します。こぼれ落ちてしまった卵が濾せます。
照りの出し方
鮎を取り出した煮汁に多少とろみを持たせるため砂糖を少し多めに加え、好みで醤油を加えます。煮汁が半分くらいになり、とろみがつく程度に煮詰めます。
取り置いていた鮎に煮汁を絡ませて鮎の甘露煮の完成です。濃いめの煮汁をかけることで最後に鮎に照りを出すといった形です。
鮎にかけた煮汁はもう一度鍋に戻して、他の鮎を煮汁に絡ませます。
煮汁が少ない場合は一度鮎を返して裏面にもしっかり煮汁を回します。
子持ち鮎の甘露煮のポイント
ポイントは、お酢で煮て骨を柔らかくすることと、2回3回と分けてゆっくり火を入れることで鮎に味を入れることの2点です。
箸で鮎を切ってみると、簡単に骨も切れます。頭のほうもしっかり柔らかくなっているので骨ごとお召し上がりください。
今回のYouTube動画
今回の記事は、動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。