きれいな水の流れるところでしか育たない本ワサビ。その風味と香りは何とも言えないものです。本ワサビの種類やすりおろし方を覚えて味わってみませんか?鮫皮おろしでのすりおろし方のほか、家庭にあるおろし金でも本ワサビがおいしく食べられる方法をご紹介します。
本ワサビとは
本ワサビは、アブラナ科ワサビ属で沖縄地方を除く日本全国に分布している多年草です。渓谷や渓流に自生していますが、きれいな水のある涼しい場所でしか育たないといわれ、野生のものは少なく主に静岡県や長野県の清流や冷涼な畑で栽培されています。
本ワサビの種類
本ワサビには主な種類が2つあります。比較的栽培期間が短く、手間がかからず大規模農場でも栽培されている実生(みしょう)と、栽培が難しく成長が遅い真妻(まづま)です。近年、真妻の生産者が減りつつあり、ますます希少になっています。
本ワサビの主な種類と違い
種類名 | 実生(みしょう) | 真妻(まづま) |
茎の色 | 緑系 | 赤系 |
特徴 | 水っぽい さらさらした感じ | 粘りがある 風味がよい |
用途 | そば向き | 刺身や寿司向き |
収穫までの期間 | 1年 | 2~3年 |
価格(/kg) | 約10000円 | 約25000円 |
辛さの正体
ワサビの辛さの主成分はアリルからし油(アリルイソチオシアネート)です。ワサビはそのままでは全く辛くなく、細かくすりおろすことによって細胞組織が破壊され、酵素が働いて分解されアリルからし油が生成されます。食べた瞬間の鼻に抜ける辛さは、アリルからし油が揮発性だからこそ生まれるのです。
ワサビのおろし方①道具
鮫皮おろし
鮫皮おろしはきめが細かく、本ワサビをおろすのに向きます。ます。本ワサビを鮫皮おろしにあてて円を描くようにゆっくりとおろせば、香りが立ちワサビ特有の鼻に抜ける辛味とクリーミーでやさしい甘みが味わえるでしょう。小さなものなら、家庭でも気軽に使える価格帯のものがあります。
鮫皮おろしの日常のお手入れ方法
- 鮫皮おろしをたわしなどで軽くこすりながら水洗いする
- 陰干しして乾燥させる
- 鮫皮が劣化するので、長時間水につけおきしたりお湯で洗ったりしないでください。
- 鮫皮はカビが生えやすいので、完全に乾燥させてください。また、乾燥は食器乾燥機を使用すると鮫皮おろしが傷むのでやめましょう。
- 鮫皮おろしを2つ用意して交互に使うと、傷みが軽減するので長く使えます。
鮫皮が変色した場合のお手入れ方法
- キッチン用の漂白剤を用意し、希釈する
- たわしなどに漂白剤を少しつけ、汚れを落としたい場所だけをこすって汚れを落とす
- ある程度汚れが落ちたら、しっかり水で流す
- 日常のお手入れをし、陰干しをして乾燥させる
- 変色は完全にはとれません。
- 長時間漂白剤をつけたままにするとかえって劣化しますので、素早く作業しましょう。
目の細かいおろし金
鮫皮おろしは手入れを怠ると色が変わったりカビたりしてしまい、大変デリケートです。できるだけ目の細かいものを選べば、金物のおろし金でも本ワサビをおいしくおろせます。丁寧に本ワサビをおろして家庭でもおろしたての風味をあじわいましょう。
おろし金を掃除する道具
指先をけがしてしまったりスポンジの繊維が引っかかってしまったりして、おろし金のお手入れは大変なものです。金属でできたササラのような道具を使えば、お手入れが楽になります。家庭でもひとつ持っておくと便利でしょう。
ワサビのおろし方②手順
下準備
表面をなめらかにする
本ワサビの表面のらせんの向きに生えた茎の跡をすりおろしやすいようなめらかにしましょう。デコボコが残っているとすりおろしにくいばかりか、すりおろしたあとにつぶつぶしたものが残ってしまいクリーミーさが半減してしまいます。包丁でこそげ落とすように削ってください。
残っている茎を取る
すりおろしやすいよう、残っている茎を取ります。取った茎も食べられますが茎の間に汚れがたまっている場合があるので、きれいに洗ってから使用してください。
本ワサビ本体をきれいにする
茎を折ったあとの繊維の残りや、水では洗い流せない汚れを包丁で取り除きます。皮が固くておろしにくそうな場所も表面を削っておくとよいでしょう。
本ワサビをおろす
ワサビが生える向きとおろす部分の違い
本ワサビの向きは、茎がある方が上部で反対側が下部です。新鮮なワサビの風味を楽しめる上部からすりおろし、下部を残すのが一般的ですが、それぞれ部分で違いがあるので、好みや用途で向きを変えて使いましょう。
本ワサビを円を描くようにおろす
本ワサビを鮫皮おろしまたはおろし金と垂直に持ち、円を描くようにすりおろします。力を入れずにゆっくりとおろしましょう。
ワサビのおろし方③保存方法
冷蔵で保存
4~5日保存可能
水で湿らせたキッチンペーパーを軽く絞り、使いかけの本ワサビをしっかり包みます。さらにビニール袋やラップでしっかり包み、冷蔵庫に入れればOKです。
約1か月保存可能
残った本ワサビの長さよりも大きいコップなどを用意し、本ワサビが隠れるくらいの水を入れて冷蔵庫に入れれば家庭でも1か月くらい保存可能です。雑菌が繁殖しやすいので、こまめに(1~2日に一度)水を換えましょう。
冷凍で保存
おろして冷凍する
使いきれなかった本ワサビを全部おろし、ラップやビニール袋、ジッパーバックなどに入れて薄く延ばして冷凍します。冷凍前に1回分づつ分けて冷凍すると便利です。一度解凍してしまうと変質してしまう可能性があるので、使う分だけ解凍し再冷凍はやめましょう。
そのまま冷凍する
残った本ワサビを丸ごとラップで空気に触れないようしっかりと包み、冷凍庫で保存する方法もあります。凍ったまま使う分だけすりおろして使いましょう。こちらも全部解凍してしまった場合は、使えないので注意してください。
ワサビのおろし方④おすすめの使い方
本ワサビは、香りや風味を損なわないうちに使いきってしまいたいものです。ホースラディッシュの代わりにワサビをステーキやローストビーフの付け合わせに使うほか、ワサビには様々な活用法があります。納得の使い方から意外な利用方法までご紹介していきましょう。
生わさび丼
材料(1人分)
- 本ワサビ:1本
- ご飯:1膳分(固めに炊くとよい)
- かつお節:適量
- しょうゆ(だし醤油でも可):適量
- きざみのり(お好みで):適量
作り方
- 本ワサビをゆっくり丁寧にすりおろす
- ご飯を盛る
- 好みの量のかつお節ときざみのりをご飯にのせる
- すりおろした本ワサビを好みの量上にのせ、しょうゆをかける
- わさびはすりおろして5分くらい置くと香りも辛みも増し、おいしくなります。
- よくかき混ぜていただきましょう。
- だしをかけたり、お茶漬けにしても味の違いが楽しめます。
わさびドレッシング
材料(作りやすい量)
- オリーブオイル(エクストラバージン):90mL
- 酢(好みの種類でOK):大さじ1
- ワサビ:大さじ1(お好みで増減可)
- 昆布茶:小さじ2
- 砂糖:小さじ1
作り方
- 酢、昆布茶、砂糖を加えて砂糖が溶けるまでよく混ぜる
- オリーブオイルを加えてさらに混ぜる
- ワサビを少しずつ加えて混ぜ、味見をしながら好みの風味と辛さに調整する
- 使うたびに作ると、生ワサビの新鮮な風味と辛さを味わえます。
- 酢の種類は米酢、バルサミコ酢など好みで選んでください。
- タマネギやネギのみじん切りを加えてもおいしいです。
ワサビの醤油漬け
材料(作りやすい量)
- 本ワサビ:1本
- 酒:100mL
- しょうゆ:100mL
- みりん:20mL
- 昆布:5cm角を1枚
作り方
- 本ワサビの表面をきれいに洗い、落ちない汚れは包丁を使って取り除いておく
- 本ワサビを千切りまたは薄切りにする
- 酒とみりんを鍋に入れて火にかけ、沸騰したら火を弱めて1分くらい沸騰させ続けてアルコール分を飛ばす
- 3にしょうゆを加え、ひと煮立ちしたら火を止める
- 4を大きめのボウルに移し、しょうゆの香りが飛ばないように氷水に当てて冷ます
- 5に刻んだ本ワサビと昆布を入れて全体を混ぜ、ラップをして2時間ほど置く
- ワサビの花や茎も同じようにしょうゆ漬けにできます。そのまま漬けると辛みは少ないので、さっと湯通ししてから漬けると風味が増します。食感や風味の違いを楽しみましょう。
- ながいもやニンジンなどを一緒に漬けてもおいしいです。
- わさびを引き上げたあとの漬け汁は、わさび風味のだし醤油として利用できます。
ワサビ漬け
材料(作りやすい量)
- ワサビ(葉、茎、根どこでも):100g
- 酒粕:100g
- 塩:小さじ1/3
- 砂糖:大さじ1
- みりん:30mL
- 酒:30mL
作り方
- ワサビを水洗いして泥などの汚れを取り、きれいにする
- 汚れの落ちないところは取りのぞき、ワサビを粗みじんにする
- 2のワサビに塩(分量外、2~3g)をふってもみこみ、ラップなどで密閉して一晩寝かしあく抜きをする
- 酒粕は常温にしておく
- 酒、みりん、砂糖、塩を混ぜ、よくとかしておく
- 4と5をよく混ぜて練る
- 3のワサビをさらし布やキッチンペーパーで包み、水分をできるだけしぼる
- 6と7をよく混ぜ合わせ、終わったらラップやビニール袋に入れてよく空気を抜く
- さらに密閉容器に入れ、一昼夜寝かせると食べごろです
- 酒粕の調味はお好みで量を増減してください。
- お子さんが食べる場合やお酒が苦手な方は、酒粕を白みそに代えて作ることもできます。調味料もひと煮立ちさせて、アルコールを飛ばしてから混ぜてください。
- あまり日持ちはしないので、数日で食べきるようにしましょう。また必ず低温で保存してください。
その他の使い方
混ぜる
すりおろした本ワサビをクリームチーズやマヨネーズに混ぜると、そのまま和えごろもに利用できます。また、大根おろしにまぜて豚しゃぶや野菜の肉巻きなどにのせてもおいしいです。
スライスして炒める
ワサビをスライスしてさっと氷水で締め、炒め物の仕上げ直前に加えてください。シャキシャキしていて、すりおろしたワサビとの食感の違いが味わえます。加熱しすぎると食感がなくなってしまうので、注意しましょう。スライサーを使えば、薄切りもかんたんにできます。
ワサビのおろし方⑤ワサビを辛くする方法
ワサビの中には、まれにあまり辛くなかったり香りが今ひとつのものも存在します。その場合に少しでもおいしく食べられる方法をご紹介していきましょう。
下部からおろしてみる
本ワサビは茎のついた上部よりも下部の方が比較的辛いので、上部からおろして物足りないと思ったら株の方をおろしてみましょう。上部のフレッシュさとは違ったしっかりとした辛さが味わえます。
包丁でたたいてみる
すりおろしたワサビをまな板に広げ、包丁の背でたたいてみましょう。ワサビの辛さや香りは揮発性なので、たたくことによって空気中に成分が飛び散って香りが立ち辛さも増します。すりおろしてから時間が経ってしまったワサビや、家庭で細かい目のおろし金がない場合にも応用できる方法です。
少し砂糖をまぶしてみる
すりおろしたワサビに少量の砂糖を加えると、辛さが際立って感じます。アクの苦さがやわらいで辛さが引き立つから、浸透圧が働くから、少量の塩をかけるとすいかが甘くなるように舌がだまされるから、などさまざまな説があるようですが、すりおろす際にワサビの先端に少し砂糖をつけても効果があるようです。
それでも辛くなかったら…
抗菌剤として
刺身や寿司の薬味としてワサビを食べることで、古くから食中毒の予防になったといわれています。これを利用して抗菌剤として使ってみましょう。例えば、すりおろしたワサビをキッチンペーパーに包み、切ったもちと一緒にチャック袋に入れて密閉保存すると比較的カビが生えにくいです。
家庭でも本ワサビを味わおう
輸送の技術や速度が発達し、生産地に行かなくてもお店や通販などで新鮮な本ワサビが手に入るようになりました。家庭でも新鮮な本ワサビを気軽に味わってみてください。普段の食卓がグレードアップすること間違いなしです!