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煮穴子の作り方。穴子を柔らかく煮る方法を詳しく説明いたします。

穴子の煮方の記事がよく読まれておりますので、ここらで詳しくまとめて見ようかと思います。

穴子の捌き方、穴子の煮方は以前の記事にまとめておりますので、そちらを参考にして頂くとして、皆さん興味があるのは穴子を柔らかく煮るという事では無いでしょうか。この記事では、柔らかく煮るという事を重点的に、詳しく解説いたします。

目次

穴子の煮方(完全版)

さて、まず前提として、穴子の煮方に正解はございません。

こんな事を言うと元も子も無いのですが、正解があるとすれば、そのお店の煮方を守る事が、正解です。

お店により受け継いできた煮方がありますし、受け継いできた味と言うものがございます。もし飲食店にお勤めの若い方が、この記事を読んだとしても、そのお店に勤めている限りは、お店の煮方、捌き方を守る事が正解です。

これは雇ってもらっている、働く場所を提供してもらっている、雇われる人間の義務ともいえましょう。たとえ、お店の味が自分に合わなくとも、お客さんはお店の味のファンであります。お店の味を守らなきゃ、お店といらしたお客様を裏切ってしまうと言う事になります。

もし味に納得出来ないのであれば、料理長に相談する、もしくは職場を変えると言う事を考えましょう。真っ当な料理人ってのはその位、真剣に料理に向き合っているわけでありますし、何よりこんなネットで読んだ記事が、お店の味に影響を与えるなんて恐れ多い事でありますしね。

さて、余談はこれくらいにしまして、穴子の煮方を徹底的に解説していきましょう。

穴子の煮汁について

まずは、穴子の煮汁説明しましょう。

お店の方は、継ぎ足し継ぎ足しで使い込む事が多いかと思いますが、それは下にまとめます。

ここでお話するのは一番最初に煮汁を作ると言う段階のお話です。

穴子の煮汁と言うのは、水と酒とみりんと砂糖と醤油で作られます。

そしてポイントとなるのは何と言ってもみりんです。

穴子の柔らかさとみりんには実は深い深い関係があるのです。

みりんの効果

何故、煮穴子の作り方とみりんが関係するのかと言いますと、それはみりんの効能に深く関係があります。

みりんと言うのは、料理の照りをだすのに使う事で有名ですが、みりんにはもう一つ、料理の煮崩れ防止という効果があります。

つまり、みりんを増やすと煮物は煮崩れしにくくなる、言い方を変えれば煮物が固くなる訳であります。

つまり、みりんを多めに入れると煮穴子は固くなると言う訳であります。

では、みりん無しで煮るとどうなるのか?

では、みりん無しで穴子を煮るとどうなるでしょう?

みりん無しで穴子を煮ると、確かに穴子自体は柔らかくなります。しかし、料理ってのはそんなに単純では有りません。

まず、煮上がった際の、皮目の照りが無くなります。

写真の穴子には、皮目に照りがあるのがお分り頂けますでしょうか?

みりんを入れずに炊きますと、この皮目の照りは弱くなります。(身の方は穴子の煮汁程度のみりんの量では照りは現れません)照りなんて無くても構わないと思うかも知れませんが、こんな細かい事にも拘る職人もいるとご理解ください。

さて、照りの話は程々に、もっと大切な事が有ります。柔らかくなると言うことは、煮る時間が必然的に短くなると言う事でも有ります。

ご存知の通り、穴子は骨ごと食べます。よって穴子は骨が柔らかくなるまで煮る必要があります。

しかし、骨が柔らかくなるまで穴子を煮ると身は煮崩れやすい。

つまりは、みりんを入れるのは骨が完全に柔らかくなるまで煮ても、穴子が煮崩れないようにすると言う目的がある訳です。

では、みりんはどの位入れるのかと言う話になりますが、これは穴子のサイズにもよりますし、捌く際にどれくらい骨をみに残すかにもよりますし、煮る時間にもよりますし、味にもよります。

まぁ、こんな事考えてる料理人なんて実際にはほとんどいないですし、人によって解釈の仕方は違うかとは思いますが、私はこれが味醂の役割と理解しております。

穴子を煮る時間

さて、お次は穴子を煮る時間についてです。

私の知る限りでは穴子を煮る時間は15分〜30分の間にしているお店が多いかと思います。

火加減も人により様々ですのでいくつか例をあげますね。

  • A店では150g前後の穴子を強火よりの中火で20分ほど煮ます。煮た後は煮汁から直ぐにザルに上げて冷まします。煮汁には味醂を入れております。

一方で

  • B店では120g前後の穴子を弱火で20分ほど煮ます。その後、煮汁が冷めるまで穴子は鍋の中に入れておきます。煮汁には味醂は入れておりません。

一方で

  • C店では200g前後の穴子を強火で20分程煮ます。その後鍋ごと氷水につけ煮汁を冷まします。煮汁が冷めたら穴子を取り出し、冷蔵庫で冷やし、最後に骨を抜きます。煮汁には味醂は入れておりません。

一方で

  • D店では220g前後の穴子を超超弱火で2時間、じっくり煮込み、煮汁ごと氷水につけ、冷えてから穴子を引き上げます。煮汁にはたっぷり味醂が入っております。

とまぁ、こんな感じに穴子の煮方と言うのはお店お店によって随分違いがあるものなんですよね。

ですが全てに共通している事は、骨をいかに柔らかくするか、身の煮崩れをいかに防ぐかと言う事です。

一般には穴子のサイズが大きくなれば骨は太くなります。穴子のサイズに合わせて穴子を煮る時間は長くなっていくと覚えておけば、そのうち自分なりの正解を見つけられる事と思います。

今まで穴子を煮たことが無いと言う方はまずは中火で20分と言うのを目安に試してみてください。

煮汁の当たりは

水2Lに対し、酒300ml、みりん200ml、醤油200ml、砂糖200g

一般的なお店の煮穴子はこの程度の甘さと塩気に調整されている事と思います。

こちらを目安にご自分の好みで調整してみてください。

穴子の煮汁は継ぎ足すの?

飲食店で働かれている方(主に鮨店で働かれている方)向けではありますが、穴子の煮汁というのは、出来れば継ぎ足し継ぎ足しで使いたいものです。

これは穴子を煮ると、煮汁に穴子の旨味が溶け出してしまうためです。何度も同じ煮汁で煮る事で、スープの旨味は増していきます。旨味の強いスープで煮る事で、穴子の旨味を少しでも身に残そうという訳です。

しかし、煮汁というのは冷蔵庫に入れていると腐敗します。よって少なくとも2日に1回は火を入れる必要があります。

火を入れるとこのように灰汁が出ます。丁寧に灰汁をすくい、水と酒、砂糖と醤油、みりんで味を整えます。鮨店のように毎日穴子を使うようなお店ならではの仕込み方といえましょう。だからこそ鮨店の穴子は美味しい訳であります。

穴子は冷めてからあげるのか?熱いうちにあげるのか?

さて、穴子が柔らかく煮上がりました。ここで疑問に思うのは、穴子は冷めるまで煮汁につけておくのか?直ぐに引き上げるのか?という事と思います。

これも様々な方法がございますのでご説明いたします。

まず、はどんな味に穴子を仕上げるのかをイメージしましょう。

  • もし貴方が、しっかりと味の染み込んだ穴子に仕上げたいのであればこのまま煮汁につけておきましょう。煮汁の濃くすれば話は別ですが、脂の乗った旬の穴子は20分や30分煮ただけでは味は入りきりません。

よってこのまま半日から1日は穴子を煮汁に漬け込んでおきましょう。煮汁の味がしっかりと染みた美味しい煮穴子ができるはずです。

  • もし貴方が、穴子を柔らかくする為に煮て、塩や煮詰め(穴子のタレ)で食べさせたいと思っているのであれば、煮汁からは早めにあげましょう。煮汁に浸けておくとどんどん味が染みて行ってしまいます。

漬け込んで置いた穴子に対して、確かに塩気は薄いですが、その分穴子の味は強く感じる煮穴子ができるはずです。煮汁を煮詰めてツメ(穴子のタレ)で食べてもらってり塩を振ったりと、味付けにバリエーションを持たせることができます。

次に穴子をどんな形で食べさせるのかを考えましょう。

上の写真を見れば分かる通り、穴子は煮ると、丸まってしまいます。

これを煮汁が冷めてから引き上げますと、当然穴子は固まっていますので、身が割れてしまいます。

もし、穴子を真っ直ぐの状態で、身割れすることなく保存したいのであれば、

このように、杓文字や宮島を使い、優しく引き上げましょう。盆ざるに並べて冷ませば、真っ直ぐな穴子が出来上がるはずです。

穴子の下処理

以前にも少しだけ書きましたが、煮る前の穴子の下処理についても書いておきます。

穴子の下処理の仕方には、

  • 塩で揉んで滑りと臭みをとる方法
  • 湯引きで表面の滑りをとる方法
  • ひたすら包丁でこそげて滑りをとる方法

の3種類がございます。

それぞれ煮穴子の仕上がりが変わってきますので、まとめてみます。

塩で揉む方法

穴子を塩揉みするメリットは、塩により穴子の臭みが抜けること。塩で身が締まるので、煮崩れにくくなる事の2点です。

塩をする事で穴子からは水分が抜けます。その水分には穴子の臭みも含まれます。これにより、穴子特有の泥臭さが身から抜けるという訳です。

また水分が抜ける為、身が凝縮され、長い時間煮ても煮崩れにくくなるというメリットもあります。

ただし、水分が抜けた分、若干ではありますが、身は固くなります。これが唯一のデメリットといえましょう。

湯引きで臭みをとる方法

穴子を湯引きして身の臭みをとる方法のメリットは、塩揉みと違い身が締まりにくいという点ではないでしょうか。また、湯引きする事で表面のぬめりが白く浮き出ますので、包丁で簡単にこそげることができます。時間を短縮できるというのもメリットの一つでしょう。

デメリットとしては、水に浸かる時間が長くなりやすいため、穴子の旨味が抜けやすいという事です。

ひたすら包丁でこそげる方法

こちらは湯引きも塩もせずにひたすら包丁で滑りをこそげるという方法です。

この方法は、活け締めの穴子に使う方法です。

活けの状態で入荷した穴子には臭みがほとんどありません。よって塩で揉む必要もありません。

また湯引きをすると、熱湯に浸けた際に穴子の旨味と脂が若干ではありますが外に逃げてしまいます。

これを少しでも防ごうと、ひたすら身を包丁で磨き表面の滑りを落とすという方法です。最後に穴子を水で洗い流す以外は穴子の身は水に触れませんので、もっとも穴子を楽しめる方法といえましょう。

しかしこの方法、やってみれば分かるのですが、とにかく手間がかかります。穴子に対して熱意のある人間にしか出来ない仕事といえましょう。

いかがでしたでしょうか?

基本的にはどのお店も、今回ご紹介した、煮方や仕込み方をベースにそれぞれ穴子を仕込んでいる事と思います。

参考にしていただければ、幸いです。

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