鮑の記事がよく読まれている様なので蒸し鮑についてもう少し詳しく書いてみようと思います。
以前の記事ではクロアワビ、エゾアワビ、メガイアワビ、マダカアワビの4種類をご紹介しましたが、実際に手に取る機会が多いのはクロアワビ、メガイアワビの2種類でしょう。
メガイアワビとクロアワビの見分け方
メガイアワビとクロアワビの見分け方は比較的簡単です。両者を並べた写真を見れば、
写真左がクロアワビ、写真右がメガイアワビです。
この2つのアワビは、
クロアワビは身質が固く刺身などの生食に向いており、メガイアワビは比較的身質が柔らかく、蒸し鮑に向いている。とされております。
しかし扱っている方は解ると思うのですが、メガイでも硬いアワビは硬いままだし、クロアワビでも物が良ければプルプルの蒸し鮑に仕上がります。
これはメガイとクロアワビの身質の差より、アワビの鮮度や状態が関係しているからです。
柔らかくなるアワビと硬いアワビの差
さて、では柔らかくなるアワビと硬いままのアワビの差はどこにあるのでしょうか?
答えはアワビ自身のコラーゲン含有量の差です。
アワビは通常漁獲されてから浜で水槽に入れられます。
そこから出荷される訳ですが、アワビは生命力が強いため河岸(市場)に着いてからも水槽で生かされた状態で数日を過ごします。
その間にどんどんアワビは痩せていく訳です。
よって漁獲されてから蒸されるまでの時間が短いほど、アワビは栄養をその身にたっぷりと蓄えていると言う訳です。
もちろんその栄養価にはコラーゲンも含まれますので、とれたてのアワビ程柔らかくなりやすく、また縮みづらいと言えます。
しかし困ったことにアワビの身のほとんどは水分。よって実際には痩せていても水分を身に蓄えるので見分けが付かないのであります。
縮むアワビと縮まないアワビの見分け方
ではどの様に縮むアワビと縮まないアワビを見分けるのでしょうか?
目利きというやつですね。
はっきり言いますと、柔らかくなるアワビと硬いままのアワビ、縮むアワビと縮まないアワビ、これを見分けるのは不可能と言って良いでしょう。
アワビをみて痩せているかどうか、水揚げから何日経っているのかどうか?そんな事は、毎日アワビをみている人間でもほぼ不可能です。
我々は海の中を見ているわけではありません。
水揚げされた時点で痩せているものもいればたっぷりとその身に栄養を蓄えているアワビもいます。
水槽に入れられてから日にちが経っているものもいれば、間も無いものもいる。そんな状況でアワビを目利きできるなら、その人は仲買人になれるでしょう。
そんなのは毎日毎日、アワビに目を通してやっと、身に付く力であります。
しかし、一つだけ簡単な方法があります。
それは、市場の人と仲良くなること。
そして色々聞く事です。
市場の人間と交流が取れればいつの入荷なのか?産地はどこか?ものは良いのか?水槽に止められていた物なのか?
なんでも気軽に聞く事ができます。
足繁く市場に通って信用を得る事が1番の近道って事ですね。
蒸し鮑を柔らかく仕上げる方法
アワビ自身の個体差はさておき、どの様に蒸せばアワビは柔らかくなるのでしょう。
この記事はあくまで私の経験から、柔らかくなり安い方法をまとめております。主観的な部分もありますがご了承ください。
それではポイントをまとめていきたいと思います。
煮るより蒸す方が美味しく仕上がる
アワビは蒸すか茹でるかと言う疑問は皆様お持ちかと思いますが、結論として、蒸す方が美味しくなりやすいです。これは煮るとアワビの旨味が水に溶け出してしまうためです。煮る場合は、最終的に煮汁を煮詰めて旨味を凝縮させアワビに旨味を戻すと言う工程を踏みますが、蒸す場合はこの工程が必要ありません。よって蒸す方が美味しくなりやすいと言えます。
殻から外した方が柔らかくなりやすい
アワビは殻ごと蒸す場合と殻から外してから蒸す場合がありますが、結論として殻から外してから蒸した方が熱の入り方がスムーズですので殻から外して蒸す事をおすすめしております。どうしても貝柱の部分は硬くなりやすいですしね。
蒸す場合は隙間をなるべく空ける
アワビ同士が重なっていると熱の入りにムラができやすいです。手間は増えますが、アワビ同士はしっかりスペースを確保して重ならない様にした方が蒸しあがりが柔らかくなります。
火は強火で高温で蒸す
低温調理や真空調理と言う方法がフランス料理にあります。
蒸し鮑を低温調理で作れないかと私も何度か挑戦した事がありますが、結果として望む様な効果は得られませんでした。蒸し鮑の柔らかさの主な要因はコラーゲンの熱分解です。よって蒸し器の火力は強火で高温で調理する事をおすすめしています。
圧力鍋は使わない
圧力鍋を使って蒸しアワビを作ると柔らかくなりやすいと言う意見もありますが、圧力鍋は鍋の中が高温になりすぎて、アワビの収縮が激しくアワビの旨味が外に逃げてしまいます。蒸し器の強火が最適と考えております。
蒸し時間は長すぎてはいけない
アワビは蒸せば蒸すほど美味しくなる等と言われる事もありますが、蒸せば蒸すほどアワビの旨味が熱分解されてしまいます。柔らかい、けれどしっかり味がある。そんな蒸し鮑が美味しい蒸しアワビではないでしょうか。
以上です。
何かお料理のヒントになればと思います。
厚めに切って甘だれで食べたり
厚めに切るのはもう飽きたよなんて方は薄めに切ってみたり、
アワビの肝ソースと和えてみたり。
どれも、ん、んまい。