当たり前ながらも廻らない寿司屋では、板前が手で握ります。差し出された寿司のシャリの形に注目すると、寿司の楽しみ方がぐんと広がります。ちょっとした違いですが、いろいろな意味が込められていますよ。形の特徴や違いのほか、寿司の数え方について紹介します。
寿司の形は大きく分けて2種類
寿司の握り方には大きく分けて2つの種類があります。この辺りは、食べる人にとって気づくことが少ない部分かもしれません。二つの握り方の特徴を知ることで、おいしい寿司をさらに楽しめるようになりますよ。
寿司の形【船底型】
はじめは「船底型」です。逆台形の形をしており、ネタが乗っている上辺に対し下辺の幅が短いのが特徴です。船のような形をしていますし、船の底を意識したつくりになっているので「船底型」と呼ばれています。
横から見ると、扇のような形をしているため、ネタにハリを持たせて握れます。シャリに対し大きめのネタを使って握るときも、シャリがある程度土台を作ってくれるので、ネタの形を崩さずに美しく見せられる形といえるでしょう。
寿司の形【俵型】
俵型というのは、シャリの握りが米俵のような形をしているのが特徴です。全体的に丸みを帯びておりコロンとした印象があります。
シャリが丸みを帯びている分、ネタとの一体感が生まれやすい特徴があります。薄めに切りつけたネタや、油分が強いネタなどに合わせるとよいでしょう。
寿司の形と握り方・その違いとは
俵型、船底型いずれの場合も握り方のプロセスは変わりません。俵のように丸く、船底のようにシャープにといった仕上げ方は、親指と小指の「締め方の加減」によって変わります。平均的に力をかければ俵型に、底にあたる部分に力を入れると船底型に成形できます。
小指で締めるときも、力の入れ方によって形が変わります。この二つの握り方の違いは練習を積むことで徐々に分けられるようになります。
寿司の形の違い
単純にシャリの形の違いだけであって、船底型と俵型どちらがいいとか、この形が握れるから優秀な板前だとかということはありません。手の形や握り方のクセなどもあるので、一概にはどちらが正統派なのかといったジャッジもできませんよね。おいしい鮨を楽しむ要素として覚えておくとよいでしょう。
普段廻らない寿司屋では、シャリの形を確認することはほぼないでしょう。ネタの切りつけ方の美しさや、寿司そのものの形を見たらそのまま口の中へということが一般的です。お店によって横にしてシャリの形を見たり、シャリの形を話題にすることは失礼に当たることもあるので、気を付けるべきでしょう。
【寿司コラム】寿司の「一貫」の単位は?
寿司の数え方をおさらいしましょう。寿司は「一貫(イッカン)、二貫(ニカン)」と数えます。しかし、寿司店によって一皿に乗せられた二つの寿司を「一貫」とカウントしたり、一皿に乗せられた二つの寿司を「二つだから二貫」とカウントしたりまちまちです。これはどうしてなのでしょうか。
江戸時代の寿司について
江戸時代に話はさかのぼります。そのころから握り寿司のスタイルはすでに確立しており、握った飯の上に生魚の切り身が乗っているという寿司の形ができあがっていました。江戸の人たちは、銭湯帰りなどにふらりとお店に立ち寄って小腹を満たすために、寿司を1~2個食べていたのだとか。
このころから、寿司の単位は1個を「一貫」と呼んでいました。ただし、ここでちょっとだけ断りを入れておくと「江戸時代の寿司のサイズで」という一文が入ります。ここから「2個なのに一貫」という寿司の秘密がわかります。
一貫の始まり
江戸時代の寿司は、今の寿司と比べても2~3倍ほどの大きさがありました。これを一つ食べると小腹を満たせるということはわかりますよね。比べてみてもサイズがかなり違うことがわかります。寿司をひょいとつかんで一口で頬張るというのが江戸の粋な食べ方ではあるのですが、大きさ的に難しいですよね。
ひょいとつかんで一口で寿司を頬張るのが「江戸の粋」なので、一口で頬張れないおにぎりサイズの寿司は「無粋」と言われるようになります。ここで提供されるようになったのが、一貫の寿司を半分に切ってサービスするスタイルです。諸説ありますが、これが今の寿司のルーツになっているといわれています。
一貫の寿司飯の量を二分して2つの寿司にしたから、「二つで一貫」という考え方が生まれています。回転寿司店でも一皿に二つ乗って流れてきますよね。
一貫の数え方に正解はある?
寿司2つで1貫や、寿司1つで1貫というカウントもどちらも考え方やとらえ方の問題なので、どちらが正統派ということはありません。古くからの風習を踏襲して「2個で一貫」とする親方もいれば、目の前にある「2つの寿司」を物理的に見て「2貫」とする親方もいるので、それぞれのスタイルを尊重しましょう。
寿司の形を知り、おいしく楽しもう!
寿司のシャリの形にも種類があります。ネタとの調和や美しさを作り上げる要素としても大切な特徴ですが、板前のスタイルや考え方によってもそのとらえ方が変わります。また寿司の数え方にもルーツがあります。なかなかとらえ方が難しいところですが、地域の文化によっても変わるので、楽しんでみてはいかがでしょうか。