高級魚クエのさばき方と熟成方法、しゃぶしゃぶの作り方をご紹介します。
クエとは?
クエというと、10kg~20kgの大型の魚をイメージする方も多いと思いますが、2kg前後の小さなクエも水揚げがあり、十分美味しく食べることができます。
クエは鍋にすると美味しい高級魚ですので冬のイメージがあると思うんですが、通年を通して水揚げがあります。でも水揚げ自体が少ないので、なかなか食べる機会は少ないと思います。味は夏場でも結構脂が乗っている魚で、1年を通して味に差がない魚です。
クエの産地
主に九州や山口などの西のほうで水揚げの多い魚です。関東では意外と水揚げは少なかったりします。養殖もののクエも出荷されていますが育つのが非常に遅い魚らしくて、養殖しても出荷するまでに5年~6年かかります。なので、養殖のクエでも結構な高級魚という扱いになっています。
クエのさばき方
ヒレの処理
まずはすき引きをするのに邪魔なヒレをハサミで切り落とします。骨は結構硬いので、ハサミで切る際に怪我をしないように気をつけながら作業を進めてください。なるべく身のキワを狙ってヒレの骨が残らないように切り落とすと、すき引きの際に包丁が背ビレに引っかかることがありません。
すき引きの仕方
すき引きは上下どちらの向きでもやりやすいほうで作業して構いません。ヒレのキワから作業をしていくと、きれいにすき引きできると思います。
クエの下の皮は厚みがあって硬いので、意外とすき引きはしやすいと思います。ヒラメの下の皮は結構薄いので下の皮を傷つけてしまったりするんですが、クエはサクサクと作業しても下の皮を貫通してしまうことは少ないです。
すき引きのコツ
すき引きのコツは、下の方向に力を入れずに、前後の動きだけでウロコを切り進めていくイメージで作業をすることです。前後に動かす幅が狭いと、どうしても進行方向に力が入りやすくなるので、なるべく包丁を大きく動かしながら作業をします。力はほとんど入れずに包丁の刃で切り進めていくイメージで作業をしてください。
下に包丁が行くのが怖くて上に力を入れすぎると、ウロコが途中で切れてうまくすき引きできません。魚の表面に包丁を優しくあてるようなイメージで、ヒレのキワまで丁寧にウロコをすき取っていきます。
カマの部分のウロコも落としておくと、カマ焼きをした際にも食べやすいので、ちょっと気を使って作業しておくと仕上がりが良いです。片面が終わったら裏側のすき引きを進めていきます。
頭の落とし方
両側のつなぎ目の頭のラインのウロコまできれいにすき引きできたら、頭を落として内臓をかいていきます。頭を落とす際は、腹ビレのラインから1本包丁を入れて、胸ビレのラインとエラの付け根のラインで頭を落とします。
骨が非常に硬い魚なので中骨を切り落とす際にしっかりと骨の関節に入らないと、相当頭を落とすのに苦労すると思います。骨の継ぎ目を狙って包丁を入れて、頭を落としてください。
どうしても骨が見つからない場合は、お腹を開いて腹ビレと胸ビレをはずして内臓をかき出して腹膜を処理すると、魚のアゴのラインから中骨の形がはっきりと見えます。凹凸がある部分が骨の継ぎ目なので、そこを狙って包丁を入れれば力を入れずとも中骨が簡単に断ち切れます。しっかりと骨の継ぎ目に包丁が入れば、さほど力を入れずとも頭は落ちます。
頭を落としたら腹膜と血合いをかき出してください。ピラッとした腹膜は包丁で切りはずしてしまって構いません。腹膜にキズを入れておいて、のちほど水洗いする際に残った血合いを歯ブラシなどを使ってきれいに洗い流します。
尻尾を落とすライン
続いて、尻尾を切り落とします。基本的に魚は尻尾に向かって身が細くなり尻尾の手前でまた太くなります。一番細いところのラインで尻尾を切り落としてください。尻尾にも身が残ってしまいますが、あまり尻尾のキワで落とすと骨の血管が細くて水を流すチューブが入りませんので、一番細くなっているラインで尻尾を落とします。残った尻尾は焼いて食べてもおいしいので、有効活用してください。一度水洗いして血合いをきれいにかき出します。
津本式の血抜き方法
血合いを洗い流してこのまま保存しても良いんですけれど、津本式という下の血管と上の脊髄を抜いてから熟成させていくという方法をご紹介します。お店では押すと水が先から出る器具を使っていますが、細いスポイトのような注射器なんかでも代用できるので、よかったらご家庭でも試してみてください。
中骨の下に1本血管があり、中骨の背中側に神経の入っている空間があります。この2か所に先端をさして水圧で血と神経を抜いていきます。
お腹側の血管に、尻尾側から器具を差し込み水を出して、水圧で血を抜きます。尻尾から入った水が中骨の下を通って、骨の中に残った血がどんどん流れて出ます。この作業をすると持ちが良くなります。津本式という本家の動画があるので、興味のある方は本家の動画をご覧ください。
続いて背中側の穴にチューブを入れて水を流すと、中骨の中に残った神経が水と一緒に抜けてきます。神経をきれいに抜いておくと、魚の腐敗が進みづらいです。一通り作業し終わったら一度魚をきれいに水洗いします。
クエの熟成方法
保存する際は、お腹側の血合いのあった部分にしっかりとペーパーをいれて、魚全体もしっかりとペーパーで包んでビニール袋に入れます。ペーパーは1日で替えますが、日が経ってくると2日に1回ぐらい交換するだけでも充分に持ちます。
カチカチに氷を詰めて、なるべくゼロ度に近い状態で保存します。
クエのおろし方
5枚おろしの仕方
上の写真は10日ほど寝かせたクエです。最初はゴワゴワしていた身がしっとりとしてきます。するとクエの味がしっかりと出てきます。一度で使い切ってしまう場合は3枚におろせば良いんですが、おろす当日に半身しか使わない場合には、5枚おろしにします。
5枚おろしにする場合は、中骨の位置に縦にしっかりと包丁を入れて、使う身のほうの背中とお腹に包丁を入れていきます。熟成させた魚は身の水分が抜けてネットリと包丁に絡みつくような感覚があり、普通の魚をさばいている時の感触とは違います。しっとり感を感じながら包丁を切り進めていきます。
中骨の丸みがある部分で身が繋がっているのでそこを切り離すと、自然と身がはずれて5枚おろしにすることができます。残った身は再びペーパーをして氷につけて保存すれば、追加で熟成が進んでいきます。
身の切り出し方
切り出した身に中骨が残っていたら磨くなり抜くなりして、しゃぶしゃぶ用に切り出していきます。クエの皮は厚みがあって硬いので、身と別にしてしゃぶしゃぶにします。
切り出し方は、身に包丁を入れて皮に当たったところで感覚が変わるので、そこから包丁を横にスライドさせて身を切り出します。慣れればそんなに難しい作業ではないので、良かったら試してみてください。
身は適当にお皿に並べて、皮は食べよい大きさにカットしておくと良いと思います。
しゃぶしゃぶの仕方
しゃぶしゃぶの地の作り方
しゃぶしゃぶは出汁にしっかりと下味をつけた地が、美味しく食べるポイントの一つです。水に一片の昆布を入れて昆布出汁を取ります。フツフツと沸いてきたら沸騰直前で昆布を取り出します。沸いた地に日本酒、お塩をひとつまみ、薄口醤油を適量垂らします。塩ベースのおでんのような出汁の地を作ります。
皮と身の火の入り具合
地が沸いたら、先にクエの皮を湯に落とします。クエの皮は硬いので大体30秒ぐらい湯に落として火を入れると、ネットリとしたゼラチンの食感を楽しめます。ポン酢や塩をつけて食べます。
続いてクエの身に火を入れますが、クエの身は大体10秒から20秒の間ぐらい湯に落とします。身の厚みにもよりますが、中までは完全に火が入っていない火の入り具合が美味しいと僕は思います。完全に僕の感覚なんですけれど、クエは生で食べるよりも火を入れたほうが魚の味が出ると思っています。
しゃぶしゃぶというと表面だけサッと火を入れて、中は半生で食べるような印象がありますが、クエしゃぶは、ちょっとだけ長めに火を入れて真ん中はレアの状態を目指します。食感があって美味しく食べられると思います。
クエの身を切ってみると、周りは白く火が入っていて真ん中はまだ生っぽい色が残っています。こんな火の通し加減がおいしいと僕は思います。もちろん鍋にしてその都度しゃぶしゃぶしながら食べるのも美味しいと思います。あらかじめ火を通して食べたい場合は、器に盛り付けて召し上がってください。皮も一緒に添えて食べると美味しいと思います。
盛り付け
クエの身と皮に火が入ったら、あとは盛り付けて食べるだけです。下味がついていますが大根おろしやポン酢でサッと味をつけると美味しく食べられると思います。スダチや柚子、塩を添えてもおいしいと思うので、好みの味付けで召し上がってください。
ポン酢や塩をつけるのに、なぜ出汁に下味をつけるのかと思うかもしれませんが、クエの場合はしっかりと下味をつけてポン酢などを合わせたほうが美味しく感じるのでこういった作り方をしています。
今回のYouTube動画
今回の記事は、動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。