大きなメヌケのさばき方や熟成方法、煮付けの作り方をご紹介します。
メヌケとは?
メヌケは深海魚なので釣り上げると目が抜けてしまいます。そのため、見た目通りのメヌケという名前がついたそうです。メヌケと呼ばれる種類の魚は何種類かいるのですが、本日はサンコウメヌケを用意しました。
千葉や北海道で水揚げが多く、北海道出身の年配の職人さんに聞くと昔は安い魚だったそうです。ところが今や立派な高級魚で、キロ単価ではキンキと同じぐらいの値段がします。冬に脂が乗る魚なので加熱調理に向いた魚です。
ちなみに、スーパーなどで売っている赤魚がメヌケだと言う方がいますが、赤魚というのは基本的に赤い色をした魚の総称です。赤魚として売られるメヌケは大概がアラスカメヌケというアメリカやロシアなどで漁獲されるメヌケで、国産の北海道や勝浦のメヌケとは別種です。
国産のメヌケと比べると、アラスカメヌケのほうが若干身がパサついてるように感じます。
メヌケのさばき方
ウロコの取り方
ウロコはすき引きでも取れますが、すき引きにすると赤色が飛んでしまうので、ウロコ引きでウロコを引いていきます。
うっすら見えるゼイゴのラインのウロコは、ウロコ引きではなかなか落ちません。手間ですが残ったウロコは骨抜きで引き抜いてください。ウロコは口の中に入ると非常に気持ち悪いので、必ずゼイゴのウロコも取るようにしてください。
頭を落とす前に一度包丁で全体をかけば、取り切れずに残っていたウロコも落とせます。
頭と内臓の落とし方
頭を落とす際は他の魚と一緒で、腹ビレのキワに1本包丁を入れて頭を落とします。この時に深く包丁を入れすぎると内臓を傷つけるので、お腹側はなるべく薄めに包丁を入れて、包丁の刃元を使って中骨を落とすイメージです。
メヌケは大型な魚のわりに深海魚ということもあって、骨は結構柔らかいです。硬さでいったらアジより柔らかい魚です。骨が太いぶんアジよりは力を入れなきゃならないんですけれど、純粋に硬さでいったらアジよりも全然骨が柔らかい魚です。
頭を切り離したら、ヘソから包丁を入れて内臓を取り出します。そして血合いに包丁を入れて魚を水洗いします。
本日は北海道産のメヌケで、しっかりとお腹の中に脂肪を蓄えています。当然身にも脂が入っていて、食べたら美味しいんじゃないかな。
なかなかいい大きさの肝が取れるので、肝がお好きな方は取り置いて蒸すなり煮るなりしてお召し上がりください。
頭も頬にしっかり肉が付いていて割って煮付けにしたりできますので、こちらも好みでお召し上がりください。
メヌケの熟成方法
すぐに食べる場合は3枚におろすだけですが、クエやメヌケなどの脂が乗る大型の魚は、熟成とまではいかずとも何日か寝かせて脂を身全体に回したほうが美味しく食べられます。
寝かせる場合は、ヒレと尻尾を切り落としてからペーパーで包んで氷詰めにします。魚はヒレに雑菌がたまりやすいので、必ずヒレを落としてから保存するようにしてください。メヌケの中骨はものすごく柔らかいんですけれど、背ビレはかなり硬いのでヒレを切る作業は力のいる作業だったりします。
物さえよければ2~3日身に脂を回す程度なら血を抜かなくても全然問題ないので、今回はペーパーで包んでこのまま0℃の冷蔵庫で寝かせます。3日ほど経つと身がしっとりとしてきます。
寝かせる方法には、脊髄や血管から細いホースみたいなものを入れて水圧で血を抜く津本式もあります。興味のある方は津本さんご本人がYouTubeで動画を出していらっしゃるのでそちらをご参照ください。
魚の熟成について
魚の血は身にとって悪さをするばかりではありません。マグロやカツオを想像していただければ分かると思うんですけれど、魚の香りというニュアンスでは旨味の要素のひとつでもあります。だからマグロのコロは血合いをつけたまま寝かせてマグロの鉄っぽさを強調したりします。
津本式という血抜きが流行っているので、何でもかんでも血抜きと熟成と皆さん言いますけれど、そんなに単純なものでもないんじゃないかなと僕は思ったりします。
魚の状態や種類によって、血をきれいに抜いたほうが良い場合と、多少は血を残して身に香りを出したほうが美味しく食べられる場合があります。10~20日寝かせる場合は腐敗の原因になりますが、2~3日寝かせて食べる場合は血を回したほうがおいしくなります。
メヌケの場合も、例えば10日20日熟成させるんだったらしっかり血を抜いてから寝かせたほうがいいですし、今回みたいに3日ほど寝かせて食べるような場合は、魚の鮮度にもよりますが、血を抜かずに寝かせたほうが美味しく食べられると思います。
メヌケの3枚おろし
普通の3枚おろしでおろします。まずお腹から包丁を入れて、次に背中から包丁を入れます。
3枚におろしたら適当な大きさに柵取りします。身に骨が入っているので、骨を抜いてから柵取りしてください。
腹膜の長い魚は柵取りが結構難しくて、普通の魚は血合いのところで半分に渡しますが、そうすると腹側がペラペラの身になってしまいます。そこで、メヌケは背中の身に結構厚みがあるので、血合いよりも背中側寄りのラインで柵取りをします。魚種や食べ方にもよりますが、煮付けにする場合はしっかり火を通すので、血合いのスジはそこまで気になりません。
背中側寄りのラインで柵取りすると、背中の身は均一に身を取ることができて、腹側の身もちょっとだけ残っている背中の身とお腹の部分を合わせて取ることができます。
ただし、しゃぶしゃぶにする場合だとスジが気になったりするので、若干身の取り方は変わってきます。
メヌケの煮付けの作り方
煮付け前の下処理
火を通すと皮目が丸まってしまうので、皮目にうっすらと包丁を入れます。
いつもは塩を振って臭みを抜くことが多いと思いますが、今回は身に砂糖を振ります。メヌケという魚自体に臭みが少ないことと、脂分が強くて身に味が入りにくいので、臭み抜きはほどほどにして味を入れるため塩でなく砂糖を振ります。
10分ほど経つと、身にうっすらと水分が浮いてくるので水で洗い流します。
続いて切り身を沸騰した湯に落として、臭みの処理は完了です。
煮付け方
腹のピロピロが不格好だと思うようなら、丸めて楊枝かなにかでとめて火を入れればきれいに仕上がります。
煮付けの地は、お水とお酒を同割程度加えたものにみりんと砂糖を適量加えます。今回はゴボウを一緒に炊くので入れます。
沸騰してきたら火を弱めて、メヌケの切り身を落とし入れます。落し蓋をして煮汁を身に回す方法もあるんですけれど、今回は煮汁を魚にすくいかける形で煮詰めていきます。
鍋が小さくて煮汁がメヌケの身の半分程度浸かるようであれば、落し蓋で味を回したほうが効率がいいと思います。各家庭の状況と調理道具とでうまいこと対応して作るのがいいんじゃないかな。
魚の身が煮汁から浮いてしまう場合は、鍋を傾けて炊くといいと思いますが、これをやると煮汁のヘリがどうしても焦げ付きます。その場合は濡らしたペーパーでこまめにヘリを拭いたりと、気を使いながら面倒を見てください。
だいたい12分ほど火を入れるイメージで炊きます。7分ほど時間が経過したらお醤油を落とします。お醤油は1度で味を決めずに2~3回に分けて味を決めます。
煮汁がブクブク泡立ってきて、充分魚の身にからまるようになったら完成です。
メヌケの煮付けの盛り付け方
煮魚は非常に身が崩れやすいので、身を崩さないようにだけ気をつけて盛り付ければ良いのではないかと思います。なるべくメヌケの赤がしっかりと見えるように盛り付けたほうが美味しそうに見えます。
ユズなんぞを添えても彩りもありますし、香りも煮付けの甘さと非常に相性が良いです。
今回のYouTube動画
今回の記事は、動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。