土鍋を使ったすし飯(シャリ)の作り方をご紹介します。お寿司に合うお米の種類や、お酢の種類についても解説します。
寿司に合うお米の種類
お米は大きくコシヒカリ系とササニシキ系に分けることができます。コシヒカリ系は、結構粘りがあって甘みがあるお米です。ササニシキ系は比較的アッサリしていて、硬めに炊き上がります。
白米で食べる場合は、粘りや甘みがあるコシヒカリ系が人気なので、出回っているお米は、コシヒカリ系が多いです。
お寿司は口の中で、ほどける食感が美味しかったりするので、ササニシキ系がむいているのかなと思います。ただ、お寿司は比較的冷めてから食べる場合が多いんです。
コシヒカリは冷めてから食べても美味しいので、コシヒカリ系の「ひとめぼれ」などを水をちょっと少なめで、硬めに炊くお店が多いです。あとは、ササニシキ系とコシヒカリ系をブレンドするお店が多いと感じます。
年配の方は、水の量を比較的多めで炊いたほうが美味しいと感じる方が多いようです。若い方はお米は硬めが好きという方が多いです。これは唾液の量の違いです。
人間は年をとるにつれて、どうしても唾液の量が少なくなっていきます。年配の方は、お米に水分をもたせないと食べづらかったりします。これはお好みで加減してください。
寿司で使用する「酢」の種類と違い
お寿司に使うお酢は、主に3種類あります。1つは穀物酢です。穀物酢は、小麦やトウモロコシから作られていて、ものすごくアッサリしたお酢です。
2つめは、お米から作られている米酢です。「こめず」や「よねず」といわれます。米の香りがして、風味が豊かなお酢です。
3つめのお酢は黒酢ではなく、赤酢というお酢です。酒粕が原料に使われていて、2年ぐらい熟成させて作るお酢です。とてもコクの強いお酢です。
すし飯に適しているお酢に正解はありません。ただ、もともと江戸前寿司で多く使われていたのは、酒粕ベースの赤酢です。マグロやアジなどの味の濃い魚が多い江戸前寿司には、ある程度お米にコクを持たせたほうが魚に合います。砂糖が貴重だった江戸時代などに、砂糖を使わずに魚に合うお酢を探して、赤酢というコクの強いお酢が使われるようになったという背景があります。
そのあとに、銀シャリという白いお米が流行る時代が来ました。その時代になると、砂糖も普通に普及していたので、色のつかないお酢を使って砂糖でお米にコクを与えるようになりました。
お寿司のすし飯は、地方によって味に差があります。東京に近づくほど、砂糖が少なくなります。逆に関西のバッテラや押し寿司などは、すし飯が甘めに作られています。
都心のお寿司屋さんでは、赤酢を使って、砂糖はほとんど使わないシャリのお店が多いです。ただ、赤酢にはクセがあります。
米酢か穀物酢を使って砂糖を入れたすし飯のほうが、クセが少なくて食べやすいです。また、他の白身や味の薄い魚にも合いやすいと思います。お好みで調整してください。
すし飯の研ぎ方
お米を炊く時に、潰すように研ぐ方がいます。精米技術がまだ発展していなかったころ、もみ殻が残っているお米をとぐためにギュッギュッと研ぎました。
今は精米の技術が進んでいるので、サーッと研いで水を何回か替えてあげれば、充分お米はきれいになります。あまりギュッギュッとやると、米自体が潰れちゃうんです。
すし飯を炊く前の浸水
炊飯器でお米を炊くと、40分~1時間ぐらいかかります。でも、米は10分ぐらい火をいれれば炊けます。なぜ炊飯器では1時間かかるかと言うと、浸水させる時間が入っているからです。あと、炊きあがった時の蒸らす時間も入っています。
土鍋で炊く場合は、火にかけている時間は20分もないぐらいです。いきなり火にかけず、1時間ぐらい浸水させます。
すし飯を炊く時の水の量
浸水したら、お米を炊きます。水の量は、重さではなく容積比です。大体、1対1~1対0.9ぐらいを目安に炊くといいと思います。
お寿司は、口の中でパラッとほどけるような食感が美味しさの要因のひとつだったりします。炊飯器の普通という目盛りでは、だいたい容積比で米1に対して水1.2ぐらいの割合で設定されています。なので、それよりはだいぶ少なめで炊いたほうが美味しいすし飯になります。
すし飯を炊く時の火加減
最初の火は、中火ぐらいです。5~10分ぐらいかけて沸騰するような火力がいいと思います。すぐに沸くような火力で炊くと火が入りきりません。
沸騰したら火を弱火に落として、12分ぐらい炊いていきます。土鍋は結構保温力があるので、火を弱火にしてもずっと沸いたままです。
土鍋はどうしても穴から吹きこぼれます。穴を自分のほうに向けておくと自分のほうに飛んでくるので、なるべく奥に向けておくのがいいと思います。
当たると火傷するので、サラシなどでフタをしても問題ありません。ただ、そのぶん逃げる蒸気の量が少なくなるので、水加減がちょっと難しかったりします。
12分経つとお米が炊き上がります。最後に10秒ぐらい強火にします。強火にすると、なべ底におこげができて、おこげの香りがシャリ全体に広がります。
水分が飛ぶので、蒸らします。蒸らす時間は大体8分ぐらいです。
すし飯で使用する「酢」の量
すし酢の量は、お店によって千差万別です。大体の基準として、お米1升に対して、お酢200ml、砂糖80g、塩20~30gぐらいに設定しているお店が多いと思います。
おそらく地域によって差があります。バッテラや押し寿司に使うすし酢は、もっと甘めに作られていることが多いと思います。また、ネタや使う醤油の味付けによっても多少は前後しますが、大体その範囲におさまっていると思います。銀座の老舗のお寿司屋さんには、砂糖を使っていないお店もあるにはあります。
お酢に砂糖と塩をしっかり溶かしてから、お米に合わせていきます。
飯切りに必要な道具と使い方
蒸らす間に、お寿司を切る「飯切り桶」を準備します。飯切り桶は、お寿司屋さんで見る桶です。それと「宮島」という大きいしゃもじも用意します。
飯切り桶は濡らさないと米が木にくっつくので、濡らしてから使います。濡らしたら余分な水気を拭き取ります。
宮島は、平らな面と角度のついた面があります。角度がついている面を上にして切ります。理由は、角度がついているところで切ると、シャリが上に跳ねあがってシャリの上下がひっくり返るからです。お酢はお米に対して重いので、どんどん下に溜まってしまいます。お米は下に溜まったお酢を吸うので、ひっくり返すことでお酢が均等にまわります。
家庭で作る場合はボウルを使うと思います。その場合は、お酢の量を多少少なめにしたほうがいいです。なぜなら、木は余分なお酢を吸い込んでくれますが、ボウルはお酢を吸わないからです。ボウルで作る場合は、お酢を1割いかないぐらい、5%ぐらい減らしたほうがべたつかないシャリになると思います。
シャリの飯切りのやり方
8分蒸らしたら、鍋から飯切りにお米を移します。
鍋底に付いてるおこげは、なるべく入れないほうがいいです。おこげはほぐれないので、鍋底の米を使わないお店は多いと思います。おこげは美味しく食べられるので、別で食べるといいと思います。
切る時は、最初にお酢をサッと全体にまわしかけます。
しゃもじの角度がついてるほうを上に向けて、切っていきます。
手から遠い部分に寄せて、まわして広げるように切ります。
そうすると、また手前に米が寄ってきます。へりに付いたお米も1か所に集めます。
飯切りを回して、集めたお米を手から遠くして、また切っていきます。
へりに溜まったお米は、お酢が多めになります。それだけ注意して切ります。
米を全体に広げると、米の熱で余分なお酢がとんでいきます。最後は全体にお米を広げて、1~2分そのまま置いておきます。
置いている間に、途中1回上下を返します。これはさきほどと同じで、重力の関係で下にお酢が溜まっていくので返します。
全体にお酢がなじんだら、シャリびつなどに入れてすし飯が完成です。シャリびつは木でできている場合が多いです。木のシャリびつは、余分な水分を吸います。中が乾燥してきたら、今度は逆に、木が吸った水分を放出してくれるので、中の湿度を一定に保ちやすいんです。飲食店が木のシャリびつを使うのは、そんな理由があります。
最後に残ったシャリはサラシなどを使うと、比較的きれいに集められます。
今回のYouTube動画
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