天然の真鯛を使って、姿造りの作り方をご紹介します。姿造りにするための鯛のさばき方や盛り付けのコツをご説明します。普通に魚がおろせて刺身が引ければ、そこまで難しくありません。ぜひ参考にして作ってみてください。
真鯛とは?
寿命が長い
鯛は寿命がものすごく長くて10年以上は優に生きるそうで、30年も生きる鯛がいるそうです。30年生きた鯛を食べるのはバチあたりな気もしなくもないなんて僕は思ったりします。
オスメスの見分け方
今回はメスの鯛なんですけれど、オスかメスかは外見でも見分けられます。アイシャドウみたいに目の上に青がうっすらと入っているのはメスです。ちょっと丸っこい優しそうな顔してるのがメスかなという感じがします。
天然と養殖の見分け方
鯛は養殖も盛んで市場にはよく出回ります。天然鯛と養殖鯛の見分け方は尻尾です。きれいに尻尾が伸びているのは天然鯛です。また赤色がきれいに出るのは天然鯛だったりします。養殖鯛は日光に当たって色が焼けるので、赤がきれいに出ない場合が多いんです。
さくら鯛ともみじ鯛
さくら鯛やもみじ鯛という言葉を聞いたことがあるかもしれません。さくら鯛は桜の時期に獲れる天然の真鯛です。皮目の色を桜に見立ててさくら鯛と呼んでいます。鯛は春に子を持つので、さくら鯛は白子や卵を含めて楽しむイメージです。
もみじ鯛は秋口に獲れる天然の真鯛のことを言います。養殖でもたまにもみじ鯛と言う方もいますが、基本的には養殖でもみじ鯛とはあまり言わないと思います。秋口は鯛の身にしっかりと脂が乗るので、もみじ鯛のほうが美味しいという方もいます。
真鯛のウロコの引き方(姿造りの場合)
姿造りのおろし方はいくつかあります。人によっては、あえてウロコを残して作る人もいます。ウロコを残す理由は、表面にウロコが残っていたほうが色がきれいに出るからです。姿造りは見た目を楽しむ料理でもあるので、あえてウロコを残してさばく方もいます。
普段は顔までウロコを取りますが、姿造りの時は頭と尻尾を残すので顔のほうはウロコを残して盛り付けに使います。包丁を入れる境目まで、ウロコを引くイメージです。
カマは残したまま使うので、カマのウロコは残します。人によってはウロコを引きますが、僕は姿造りは顔に目がいくので、顔のウロコは残しておきます。
真鯛のさばき方(姿造りの場合)
普段はウロコが引けたら頭を落として内臓を出しますが、姿造りの場合は一旦洗って、さばきながら内臓を抜きます。
全体を水洗いしたらエラを取りはずします。さばくのに慣れている方は分かると思うんですけれど、エラは1枚膜が張っているので、膜を最初に切り離します。
エラの頭側の付け根部分もしっかりと繋がっているので一番上を切り離します。裏返して、反対側も同じように膜と付け根部分をはずします。
アゴもエラが繋がっているので切り離します。アゴとお腹の付け根まで切り離すと盛り付けた時に離れてしまい、見た目がかっこ悪くなるので気をつけてエラの付け根だけを切るようにしてください。エラの付け根が切り離せたら引っ張れば簡単にエラが抜けます。
今回の真鯛は活け締めの鯛です。活け締めというと、頭からざっくり包丁が入ってる場合が多いんですけれど、魚屋さんに言っておけば姿造りの際に見えづらい場所だけ締めてくれます。
今回の鯛は、エラぶたで血を抜いて、尻尾にも小さく包丁を入れてくれました。なので、頭を左に向けて盛り付けた際に、裏になる身のエラぶたは切り離されています。裏のエラは膜だけはずせばいい状態になっています。
人によっては軽く水洗いをして、内臓がついたまま身をはずす人もいますが、僕は内臓がついたまま身をおろすことに抵抗があるので、内臓を抜きます。
内臓の抜き方は、胸ビレの付け根あたりに1本包丁を入れて、魚のヘソにかけて開きます。
切れ込みから内臓が見えたらかき出します。ちょっと気持ち悪いんですけれど、エラ部分の中側に指を入れて、内臓を付け根から引っこ抜くようにすると簡単に抜けます。
内臓を抜いたら水洗いをして、エラの血や内臓の触れていた部分を洗い流します。腹を大きく開いていないので、なかなか血合いはきれいにかき出せませんが、さばいて骨が残った段階できれいにするので、この段階では神経質に掃除しなくても大丈夫です。
真鯛のおろし方(姿造りの場合)
僕の場合はまず頭を左に向けた身からはずしていきます。まず残すラインを包丁で引きます。普段は、頭ギリギリに包丁を入れて身を多く取りますが、頭はしっかりと残したほうが見栄えがいいので、頭から中骨の始まりあたりまで斜めに包丁を入れます。
普段は頭側の腹部分の身はしっかりおろしますが、今回は盛り付けた時に残すほうが見た目が良いので、中骨の始まりからヘソに向かったラインを入れます。この時、アバラ骨に当たりますが、アバラ骨を切り離さないようにラインを入れます。人によっては逆さ包丁で入れる方もいます。
尻尾もある程度残したほうが見栄えがいいので、普段より少し残してラインを入れます。
お腹も普段は腹ビレギリギリに包丁を入れますが、ちょっと骨に身を残すような感覚でラインを入れます。
ラインを入れたら、腹の身は中骨まで包丁を進めます。深めに包丁を入れるとせっかく残した腹膜を破ってしまうので、慎重に包丁を入れてください。
上下を返して、背中側も背ビレのギリギリを狙わず、多少身を残すつもりで包丁を入れます。
この段階で表側の身をはずしてもよいのですが、そうすると頭と尻尾が残っているので裏側の身が不自然に浮いた状態になっておろしづらくなります。そのため、表側の身はラインを入れてお腹の身だけ少しはずしておいた状態で、身を返して裏側をおろします。
裏側の顔も見えるので残しますが、背ビレや腹ビレの辺りは見えないので、表側のように気を使って身を厚く骨に残す必要はありません。骨のギリギリを狙っておろしていきます。
お腹から包丁を入れて中骨のラインまで入れます。頭をどれぐらい残すかは好みによりますが、このぐらい残しておけばいいのかなというところに包丁を入れます。裏側の背中の身を背ビレギリギリでおろして中骨まで包丁を切り進めます。尻尾の身もはずします。
表側の身がおろしづらくなるので、裏側の身はアバラ骨を断ち切れば身がはずれる状態にして、表側を上に返します。
表側の身は、背中に残ってる身を切り離すだけです。ここまで来たら3枚おろしとほぼ一緒です。3枚おろしの順序を変えているだけなので、そんなに難しいことではないかな。
アバラ骨を骨側に残す方もいるんですけれど、僕は断ち切ってしまいます。鯛のアバラ骨は結構身の表面近くまで食い込んでいるので、無理してアバラ骨を残そうとすると腹の身をだいぶ削っちゃいます。
表側の身をはずしたら、裏側の身をアバラ骨で断ち切ってはずします。鯛の骨と身を切り離すと、表側の身は当然小さくなります。
最後に骨側に残った血合いをきれいに洗い流します。人によっては、腹側を繋げたままの人もいるんですけれど、盛り付ける時に自由度が低くなるので、僕は切り離しちゃいます。人によって意見は様々だと思うので好きなように作ってください。
頭がついている身は乾燥するとヒレがチリチリになるので、盛り付けるまで濡れたサラシなどで覆って保存しておきます。
ツマの準備
姿造りはツマ類を大量に使うので、大根やミョウガなどは桂むきしたりケンにしたりします。
僕がよく使う飾り付けはキュウリです。どう切ってもいいんですけど、飾りをよく作ったりします。
カボスもスプーンなどで中身をくりぬいて、多少フチをきれいに整えてジグザグに切り込みを入れて飾りにします。お好きな飾りを使って盛り付けてください
刺身の切り方
身のさばき方は普通のお刺身と一緒です。アバラ骨をすいて、お腹と背中に渡して刺身にするだけです。
すいたアバラ骨や血合いは、残った骨と一緒に鯛めしにすると美味しく食べられるので、別で取っておいてもいいのかなと思います。
まるまる鯛を食べるので、全て同じように刺身にすると食べ疲れてしまうので、さばき方をいろいろ取り入れます。お腹側は皮を引いてそぎ造りにし、背中側は皮付きのまま松皮造りにします。
お腹側の身は、銀皮が残ったほうがきれいに見えるので皮を引きます。アバラ骨があるぶん刺身の形が均一にそろいづらいので、そぎ造りにします。
お腹側の引いた皮も美味しいので、一緒に火を入れるとお刺身の添え物として使えます。お好みでお試しください。
背中側の身は比較的オウトツが少ないので、平造りにしてもきれいに並べることができます。
背中側の身は皮目に熱湯をかけますが、僕の場合は熱湯をかける前にうっすらと皮目に包丁を入れておきます。そうすると、お湯をかけた時にきれいに開いて見栄えがいいと思います。切れる包丁でないと皮だけ切るのは意外と難しいので、なるべく切れる包丁を使ってください。
湯引きすると皮が縮まって、包丁を入れたところが開くので見た目は良いのかな。
何人前も作るような時は、小さい刺身のまとまりを作っておきます。3切れや5切れずつのまとまりを作りながら切っていきます。
平造りとそぎ造りだけだと刺身に動きが出づらいので、お腹の薄い部分は細く切って糸造りにしたり、尻尾の硬い部分はサイの目に切ってみたりします。今回は湯霜にしましたが、片面はバーナーでちょっと炙って焼霜にしてもいいと思います。
尻尾のほうのちょっと歯ごたえのあるような身は、厚みを持たせてサイの目に切って、木の芽を軽く叩いて木の芽和えにしてみたり、カラスミをちょっと上から振ってみたりもよくやります。
せっかく1匹の魚をまるまる食べる機会があるなら、切り方や部位によって味がどう違うのかを考えながら食べてみるのも面白いのかななんて思ったりします。上手に組み合わせて、いろいろな食感のお刺身を楽しんでみてください。
姿造りの盛り付け方
桂むきした大根で鯛のベースの位置を固定します。角度は好みで調整してください。大根だけだとちょっと不安定だなと思ったら、串を打って固定してください。
ヒレはピンと張っているときれいに見えるので、胸ビレの場合は顔寄りのヒレを1本割いてエラの中に入れると、自然とヒレを広げた姿になります。
背ビレを広げたかったら1本だけ短い背ビレをハサミなどで切り落として、背ビレの裏側で止めたりなんかもします。
ツマは大量に使って、なるべく豪華に見えるように盛り付けます。刺身の盛り付けの鉄則は、なるべく奥が高く手前が低くなるようにすると見た目は良かったりします。
絵を描くのと同じでざっくりと構図を決めたら、刺身を置く位置に大葉を敷いたりスダチを置いたりします。あらかたの刺身の配置を決めてから切り出した刺身を盛っていきます。
なるべく同じ造りの刺身が1か所にまとまらないように、僕はランダムに盛っていきます。好みの問題ですが、隙間がないように豪華に盛ったほうが姿造りはかっこいいという人と、ある程度余裕を持たせて作ったほうがきれいに見えるという人がいます。感性の問題なので、好きなように盛ればいいんじゃないかなと思います。僕は大きい器を持っていないので、皿一面に盛るような形になってしまいます。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。