カマトロの捌き方をご紹介します。一般のお客様が持っているイメージと、寿司屋さんや市場の評価の違いについても説明しています。
カマトロとは
カマトロとは、カマの骨の内側に詰まった部分の肉のことです。カマには、骨の内側のカマトロの他に、骨の外側の赤身っぽい部分、血合いっぽい部分、中トロっぽい部分がくっついています。
カマトロの評価について
カマトロは、一般のお客様が持っているイメージと、寿司屋さんや市場の評価が意外と違う部位です。カマトロは、脂が乗っているので見た目のインパクトが強くて希少性もあるので、最高級部位みたいな売り出し方をされます。たしかに、今回の120kgのマグロからカマトロは上の画像の2個分しか取れません。
でも、実は寿司屋さんの間では、カマトロはそこまで評価の高い部位ではありません。希少部位ではあるんですが、こぞってみんなが値段をつけて取り合うほどではない部位です。カマトロが売っているのを見たことがある方もいるかもしれませんが、売っているカマトロは、基本的に冷凍マグロのカマトロです。国産の天然の本マグロのカマトロは、基本的には市場で売りに出されることはありません。天然マグロのカマトロは、腹上(お腹の一番上の部分)を仕入れた寿司屋さんにマグロ屋さんがおまけでくれます。
なぜそんなことが起きるのかというと、カマトロの部分を積極的に使いたがる寿司屋さんはあまりいないからです。カマの赤身や中トロの部分は身が小さく、筋っぽくて使える部分がほとんどないですし、熟成させることが難しい部位なんです。
本マグロは、熟成させたほうが味が出ます。2~3週間寝かせたきれいな赤身は、味がしっかりと出て旨味も強くなります。しかし、カマトロの部分は血合いや腹膜に近い部分なので、身が熟成するより先に、変色したりにおいが出てしまうのです。
カマトロの外し方
カマの赤身や血合い、中トロの部分を外してから、カマトロを取り外します。
形にもよりますが、カマトロ以外の部分を外してしまってもいいですし、血合いの部分を先に外してから大きくばらしてもよいです。お好きなようにさばいてください。
今回は、血合いの部分を先に外します。目視で食べられなさそうな血合いの部分を磨きます。磨いていくと、赤身やきれいな肉が出てきます。
カマの骨の外側部分には、腹膜や骨があったりしますが、まずは食べられそうな部分を外します。
骨の外側の中トロっぽい部分と赤身っぽい部分、骨の内側のカマトロの部分に分けます。
骨の外側の部分は、筋や腹膜などを順々にばらしていきます。上の画像の中トロの部分は、見てわかるとおり、非常に筋が強いです。また、腹膜や血合いも落とさなければいけないので、かなりいびつな形になります。膜を掃除して筋を取り除くと、中落ちみたいな食べ方をすることになるので、見た目ほどは食べる部分はない印象です。
赤身の部分にも強い筋があるんですが、腹膜や骨などを取り除けば食べられます。ただ、熟成させることが難しい部位なので、赤身の部分はまかないなどに回すことがほとんどです。無理に使おうと思えば、赤身の部分を提供することも可能ですが、どうしても旨味にかけるので、商品としてはちょっと使い勝手の悪い部分です。
いよいよ本題のカマトロを外します。カマトロは硬い骨と皮に挟まれています。外し方の流れは、皮目から包丁を入れて、骨のキワに1本包丁を入れて、手でカマの肉を外していきます。
まずは、皮目に思い切って包丁を入れて身を外します。
骨のキワに1本包丁を入れます。
手でカマの肉を外します。
カマトロが抜けたら、包丁でサポートをしながら引き抜きます。
取り出したら、取り残した膜や皮をそぎます。
これだけ脂が乗っていて、1匹から少ししか取れないと言われると、ものすごく美味しそうに見えるかもしれません。でも、僕の好みはしっかりと寝かせたマグロです。カマの部分は寝かせることができないので、充分に寝かせて旨味が回ったマグロのほうが美味しそうに見えます。マグロの美味しさは、脂の乗りだけじゃなくて、身のしっとり感や身の旨味、甘味、筋のなさも関係してくると思います。
天然のマグロで脂が乗っていれば、カマトロも間違いなく美味しいと思います。どうしても食べたい方は、腹上を仕入れている寿司屋さんに頼めば、仕入れのタイミングに合わせて意外と取っておいてくれると思います。
カマトロの切り方
カマトロの筋に対して、平行の向きに包丁を1本入れます。
つぎに筋に対して垂直に筋を断ち切るように切ります。
断面を見るとめちゃくちゃ美味しそうに見えます。若干脂が強すぎるので、軽く包丁を入れて炙って食べるのがよいと思います。お好みでお召し上がりくださいませ。
カマトロの鮨
ちょっと炙って寿司にしました。見た目はほぼ焼き肉で、肉寿司みたいになっています。脂が強いので、ワサビはたっぷり乗せて食べたほうが美味しいと思います。カマトロならでは脂のよさもあるので、ある程度正しい情報を知った上で、お食事を楽しんでくださいませ。
今回のYouTube動画
今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。