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【まかない】アラでラーメン出汁をつくる

板前のまかないとして、魚のアラを使った出汁の取り方をご紹介します。魚好きの皆様は、ちょっとずつ魚の骨をためて、お休みの日にでもお試しくださいませ。

目次

魚のアラについて

用意するのは、中骨やカブトなどいろいろな魚のアラの部分です。今回はノドグロ・アマダイ・クロムツのアラです。

中骨はお客さんに出すことはほぼありませんし、カブトにも肉があるにはあるんですが、お客様にお出しするには骨が多くて食べづらいかな。商品化しづらい部分を使ってまかないを作ります。

アラの準備・掃除方法

一般の家庭では、一度に魚の骨は大量に出ないかもしれませんが、我々も決して1日で多くの骨が出るわけではありません。ノドグロは1日1匹もあれば充分足りますし、アマダイも2~3匹同時にさばくことはまずありません。ですので、骨は1匹さばくごとにこまめにラップにくるんで冷凍してあります。ある程度アラがたまった時点で解凍して、出汁を取ってラーメンを作ります。なので、アラの出汁を使ったラーメンは、日頃から魚料理をしている方の特権的な料理ですね。

魚のアラを冷凍する際のコツは、中骨についている血合いやカブトのエラなどをきれいに掃除した状態で冷凍することです。忙しい中で作業をしていると、カブトの血合いまできれいに取り切れないんですが、できる範囲でしっかりと掃除をした状態で冷凍します。血の塊が付いたまま冷凍にかけると、解凍した際に血生臭いドリップが出ます。そうすると食欲が失せるので、最低限の掃除はしてから冷凍します。

解凍しても汚れが残っているので、残った血合いや腹膜などをきれいに掃除します。解凍すると臭いが出る場合が多いので、塩水で掃除します。塩水にすることで臭みが抜けるのと同時に、水分も抜けやすくなって出汁が出やすくなります。必ず塩水で水洗いするようにしてください。

アラの焼き方

塩水できれいになったら、焼いていきます。焼く場合は網でもいいですが、アラが大量に出る場合はオーブンで焼いたほうが焼きムラも少なくて作業も楽です。今回はスチコン(スチームコンベクションオーブン)を使って、250℃で魚の骨を焼いていきます。

スチームコンベクションのメリット・デメリット

僕の場合は、出汁を仕込む際はスチコンという大きいオーブンで、ある程度アラの量があっても2~4段重ねて一気に焼きます。小さいオーブンの場合は、手間ですが頑張って何度か焼くしかありません。

スチコンは、水蒸気の量を40~100%と選べたり、温度を300℃まで自由に調整できたり、水蒸気なしで熱風だけを出すモードがあったりします。蒸し器として使う場合も、温度を1℃単位で調整できたりするので、飲食店では便利な機材の一つです。若干高いですけれど、若い子1人分ぐらいの働きはしてくれます。

温度調整でガスがついたりモーターが動いたりするので、若干うるさいです。コンベクションというのは空気の対流という意味なので、250℃に設定したら250℃の熱風がグルグル回っています。場所による温度の差ができずに焼けるのが、コンベクションオーブンのメリットです。また、人によって差が出にくいのも非常に使い勝手のよいポイントです。

デメリットとしては、焼きムラができないことです。サンマの塩焼きなどをイメージすると分かりやすいんですが、所々焦げている部分と程よく火が入っている部分の焼きムラが美味しそうに見えるものなので、コンベクションオーブンはどちらかというと西洋っぽい料理に向いていると思います。均一に焼けるというのは、必ずしもメリットばかりではありません。日本料理に関しては、均一に焼けることがデメリットになったりもします。なので、状況や作業によって使い分けるというのが大切かな。

中の温度が均一だからといって、表面と下になっている部分では当然表面に先に火が入ります。なので、ある程度火が入ったら魚を裏返すということは必要です。

出汁の取り方

魚の骨がこんがりと焼けたら、出汁を取っていきます。通常の水から出汁を取っていきます。

和食を作るときは野菜のヘタなどは入れずに、昆布と鰹でクリアな出汁を取ります。玉ネギやニンジンなどの野菜の端材を入れると甘みが出るので、あまり和食には向きません。今回は出汁の複雑さを味わうラーメンを作ることが目的なので、ニンジンの皮や玉ネギのヘタを混ぜ合わせながら、ちょっと濃度の高い出汁を取ります。

どんどん煮崩してしまうので、火は強火でガンガンに沸かします。「漁師飯」は獲れたての新鮮な魚をいかに美味しく食べるかという料理ですが、今回の料理は板前が作るなかなかお金にしづらい捨ててしまう部分をどうおいしく食べるのかという「板前飯」です。こういう手をかけて味を作っていく料理は、僕の好きな類の料理です。料理に手間をかけられる人が食べることができる料理です。

煮込む際に必ず入れて欲しいのは、生姜です。生姜は臭み消しになるので必ず入れるようにしてください。生姜の量は、使う魚を見て量を決めます。今回はノドグロ・アマダイ・クロムツの白身系が中心なので、生姜の量はそんなに必要ありません。でも、サバやアジなどの青魚を使って出汁をとる場合は、生姜を気持ち多めに入れたほうが臭みが出づらいです。

強火でボコボコ1時間ぐらい煮込みます。煮崩れを心配する必要はなくて、ガンガンに出汁を取りたいので、アクをすくいながらボコボコ沸かします。

水をたっぷりめに入れますが、水の量が半分になるぐらいまではしっかりと煮詰めて出汁をどんどん濃くします。あまりに煮詰まりすぎて焦げ付きそうだなとなったら、少し水を足して出汁の濃さを調整します。

1時間ほどかけて出汁を取ります。弱火でぐつぐつ煮ると白濁したスープは取れないので、最後のほうはボコボコしっかりと沸かす勢いの強火にかけて出汁を取ります。

出汁の濾し方

1時間ほど経つと、とんこつスープのような白濁した出汁が取れます。そうしたら、骨が入らないように出汁を濾します。

濾す際は、鍋などに目の細かいザルをかませます。それだけだと隙間から骨が落ちてしまうので、1枚ペーパーをかませて、その上にもう1枚ザルをかませます。最初のザルで魚の大きめの骨を濾しながら、ペーパーで細かい魚の焦げやザルの目からもれた小骨を濾します。

一気にペーパーに落としてもいいんですけれど、アラの量が多いのでザルがパンパンになって作業しづらくなります。2重にザルをかませるのが効率がよいと思います。アラがいっぱいになってきたら出汁ガラを捨てて、また新たにアラを濾します。

あまり見たことのない色をしているんですけれど、非常に濃厚で美味しい出汁が取れます。作った出汁がちょっと濃すぎてヘビーな場合は、昆布と鰹で取った和出汁と半々ぐらいで割って食べても美味しいです。その辺は、出汁の濃度と何人で食べるかによります。煮詰めすぎて人数分取れないときは、鰹出汁で薄めながら量を調整してください。

あとは塩でも味噌でも醤油でもお好きなように味を整えて、ラーメンを入れてお召し上がりくださいませ。

今回のYouTube動画

今回の記事は動画でも紹介しております。ぜひ、ご参照くださいませ。

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