家で小料理屋風に刺身を盛りつけたいといったとき、バランスよく盛りつけできないとか、センスがないというような悩みを聞くこともあります。刺身の切り方や盛り付け方のコツを覚えることで、どんなお皿でも綺麗に決まります。ここでは盛り付け方のポイントをメインに紹介します。
刺身の切り方のおさらい
刺身は、切り方によって食べやすさを引き出したり、見栄えをよくすることができます。刺身の盛り付け方をより魅力的にするために、刺身の切り方をおさらいしましょう。ちょっとのひと手間で一切れの刺身の見栄えが良くなる方法も紹介します。
平造りのポイント
マグロは平造りにします。刺身の切り方のポイントとして、身が崩れるのを防ぐために筋の方向と繊維の流れを見極めてマグロを配置します。マグロの筋に直角に流れるのがマグロの繊維ですが、その流れは筋目を見るとどちらの方向に向いているかわかります。順目は、上から下へ繊維が流れるように配置するのがポイントです。
通常の平造りは、柵に対して垂直に包丁をおろして切りつけるのですが、お造りとして見栄えをよくしたいなら、切り方を工夫します。
包丁の刃を少し外側に向けて柵を切りつけます。こうすることによって、断面が広く取れます。また、棒のような刺身にならず、バランスがとりやすくなるメリットもあります。また、包丁は刃先を入れるときだけ押し出すようにしますが、あとは引きながら切ります。繊維がつぶれず、きれいな断面が作れます。
まっすぐ包丁を落としただけのものと、刃先を外側に向けて斜めに包丁を落としたものを見比べましょう。斜めに包丁を落としたものは、切り口が鋭角になりシャープな印象に仕上がります。角が際立つうえ、まっすぐに包丁を落としたものと比べてもあか抜けた感じがします。
3切れほど並べました。同じ幅を意識することも忘れずに包丁を入れることで、きちんとそろった刺身にしあがります。柳刃包丁を使うと、身をつぶすことなく綺麗な断面の刺身になるのでおすすめです。
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筋の切り方の参考動画
そぎ造りのポイント
そぎ造りは、柵の左側から切りつける方法です。包丁を寝かせて薄くそぎ切りをする方法です。白身の魚は繊維の方向を気にする必要はありませんが、身をつぶさずきれいに切るには、皮目を下に、尾側が左手(包丁を握る手と反対側)になるように配置するとよいでしょう。
見栄えの良い刺身を作るポイントです。包丁を入れた後、皮目の少し手前で身と包丁を立ててから、包丁を手前に引いていきます。このひと手間がきれいな刺身を作るコツになります。
包丁と身を立てないままそぎ造りをすると、皮目の部分がぼやけたしあがりになりますが、包丁と身を立てて角度を変えて切ると皮目の部分に角度がついてはっきりとした切り口が見えます。白身と皮を引いた部位の桜色のコントラストがきちんと見えるので、凛とした印象の刺身になります。
そぎ造りの参考動画
刺身の盛り付け方(1人前)
そぎ造りや平造りの手法でお造りができるようになったら、皿に盛り付けてみましょう。自宅に和料理用の皿がなくてもかまいません。小ぶりの皿が一枚あれば趣がある刺身の盛り付けができるようになります。基本的なポイントやコツを守ればだれでも、どんなお皿でも綺麗なお造りにできますよ。
盛り付け方に動きを作る
和食の盛り付けの基本は3品です。今回は、マグロの平造りとタイのそぎ造りのほかに、味わいが異なるホタテの貝柱を用意しました。生でもおいしいのですが、生魚との組み合わせを考え、軽く炙りを入れて香ばしさを出します。家庭でも、カセットガスボンベを使用する炙り用バーナーなどを使うと、簡単に炙りが入れられます。
刺身2種が「切る」調理だったので、動きをつけるために手で割きました。4つ割り位にすると口に運びやすいでしょう。貝柱の繊維は縦にあるので、綺麗に割けますよ。
1人前の盛り付け方の基本
皿に、手前と奥を作ります。これは刺身の盛りを見たときに綺麗な風景ができるようにするためです。一人用の盛りの場合は、奥に高さを作ります。大根のけんで山のように土台を作りシソを使って、大根の水っぽさが刺身に移らないようにします。
大根のけんで高さを作ったところには、幅と柵の高さがあるマグロを置きます。すると高さにボリュームが出せます。手前は低く、三角形を意識しながら配置すると整いやすくなります。そぎ造りで薄いタイと小さく割いたホタテは手前に配置しましょう。タイは端を少々たたんで配置すると落ち着いて見えます。
一つのお造りにつき2切れ~3切れ程度の配置になるので、さらに隙間が出てしまいます。ホタテの色合いを引き出し、風味を高めるためのレモンスライスや、青みが綺麗なすだち(柑橘類)、箸休めにもなるみょうがをその隙間にバランスよく置くと、高さがある山と裾野といった風景がさらに広がります。
刺身の盛り付け方(3人前以上)
酒のあてとして一人分の刺身の盛り付け方だけではなく、家族で刺身を食べるときを想定した、盛り方になります。3人~6人程度の量を想定して盛り付ける際の概念やコツを覚えると、みんなが食べやすく見栄えがする盛り皿料理になります。ここで紹介するコツやポイントはどんな皿や刺身にも応用できるので試してみましょう。
盛り付け方に動きをつける
1人分の刺身の盛り合わせと同様、平造りのマグロとそぎ造りのタイを使います。和食の基本は奇数ですので、もう1種プラスします。また刺身の盛りに動きをつける効果もあります。ここでは、そぎ造りにしたタイを棒状に切り、千切りにしたシソと和えたものでバリエーションを持たせます。
3人前以上の盛り付け方の基本
3人以上で一つの皿の料理を食べるときは、食卓に横一列にはなりませんよね。向かい合って座ることが一般的です。この場合は、丸いお皿の中心に高さを持たせ、どの位置からも「奥と手前」を実感できるように盛り付けすることがコツとなります。大根のけんなどを中心に盛り、山のような高さをつくってください。
どの位置からでも箸が伸ばせるよう、3分割程度に分けて刺身を盛ります。一つのかたまりに2枚~3枚程度を乗せるのが綺麗に整うコツです。しなやかさを見せるよう、刺身を少し湾曲させて盛ると動きが付きます。
高さ出しが決まったら、その周りを囲むようにタイの刺身2種を盛り付けていきます。山の裾野をイメージすると、横から見たときに美しく配置できますし、円をイメージすると、低い位置に配置する2種の刺身がバランスよく配置できます。この時少し隙間が空いてもかまいません。皿の面積をいっぱいまで使うように配置しましょう。
最後に、ツマで隙間を埋めます。タイの刺身の間を埋めるようにツマを置くと、綺麗な円を意識できます。華やかな印象を与えることができるので、お皿の面積をいっぱいにするイメージでツマを配置するとよいでしょう。風味を移す意味も含め、レモンスライスは、シソで和えたタイの下に敷くようにするのもいいですね。
刺身の盛り付け方のポイント
家族で刺身を食べる場合や、一人分だけ盛って酒のアテにしたいなど、刺身を皿に盛る理由はそれぞれです。刺身の盛り方のポイントをまとめるので参考にしてください。これならスーパーで購入した刺身もおしゃれに盛り付けができるでしょう。刺身用の皿を改めて準備する必要はありません。この意味も含めてまとめます。
①刺身のバリエーションを考えよう
和食の基本は奇数です。1種類、3種類、5種類というように皿にのせる刺身の種類を整えると、盛り付けたときにキマりやすくなります。刺身を購入するときは、奇数を意識して購入するとよいでしょう。赤身と白身をそれぞれ選ぶなど、色合いも考えると盛り付けに動きが出ます。食感も異なるので、楽しめますよ。
すべて同じ切り方では、寂しい感じがします。平造りとそぎ造りというように魚の身の状態に合わせて切り方を変えることもおすすめです。柵から刺身を仕立てるときには切り方も変えてみましょう。
2種類の刺身しか準備できなかったという場合でも、問題ありません。今回は、タイの刺身を細く切って刻んだシソと和えて、アレンジしたもので3種類作っています。マグロをアレンジするなら、ヅケにしたものを添えたりすることもよいでしょう。もちろん、ホタテなどの貝類などを添えると、見た目も鮮やかになるのでおすすめです。
②お皿の風景を考えよう
少人数用と3人前以上の盛り付けでそれぞれ同じ器を使っています。1枚の皿があれば、盛り付け方の工夫によって人数に応じた盛り合わせが作れることを覚えておくと便利です。1人前であれば、皿の中央に盛るようにし、皿が持つ風景を見せてあげるようにするとよいでしょう。
3人前以上であれば、盛り合わせ全体の風景が見えるようにします。皿いっぱいに盛り付けることで、ボリュームが出て見栄えもよくなります。少人数だと1方向から皿を見る機会がほとんどなので奥と手前という概念がありますが、大人数なら中央を奥と位置付け、どの位置からでも高さと裾が見えるようにしましょう。
③薬味で彩りを添えよう
マグロの赤、タイの桜色と白だけではちょっと物足りません。彩りを添えると見栄え良くなります。高さを作るなどの土台の役割だけではなく、口直しや風味付けの効用が得られます。またシソやレモンの酸味は殺菌作用がありますし、大根は酵素の作用によって胃腸の調子を整えてくれます。黄色や緑は食欲増進効果も得られますよ。
彩りに使うのは、いろいろあります。シソ、大根、わさびやショウガなどは定石ですが、ニンジンを桂むきにしたものを彩りに添えたり、夏場であれば、穂紫蘇と呼ばれるシソの花、キュウリやわかめで涼しさをプラスできます。秋などは菊の花を添えるのもよいですね。彩りがあれば、白い洋皿でも刺身を魅力的に見せてくれます。
粋な刺身の盛り付け方を覚えよう
刺身の盛り合わせは、どの位置に座っても箸を伸ばせるよう風景を考えて盛り付けます。人数に応じて皿の使い方を変えると見栄えが良くなります。皿が一枚あれば盛り合わせが作れるので、お祝いの席やちょっとした飲み会のアテとして作ってみるとよいでしょう。彩りになるツマを添えて華やかな盛りをつくってください。
今回YouTube動画
今回の記事は、動画でも紹介しておりますので、是非、ご参照ください。